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働き方改革とグラフ

開業医の「労働時間」リアルな実態|働き方改革とのバランス

「開業すれば、自分のペースで働けるようになる」——そう期待して独立を考える勤務医は少なくありません。確かに、上司の指示や病院のシフトに縛られない働き方は、開業医の大きな魅力のひとつです。しかし実際のところ、開業後の労働時間は「自由」とは言い切れない側面も多くあります。この記事では、開業医の労働時間のリアルな実態、勤務医との違い、働き方改革との関係、そして働き方を自分でコントロールするための具体的な工夫までを解説します。

 

開業医の労働時間、実態データ

平均的な診療時間・週あたりの勤務日数

日本医師会の調査によると、診療所を経営する開業医の週あたりの平均労働時間はおよそ50〜55時間とされており、一般的な会社員と比較しても決して短くはありません。診療日数は週5〜5.5日が多数派で、土曜午前診を行うクリニックも多く見られます。診療時間そのものは、午前9時〜12時・午後14時〜18時といった設定が一般的ですが、患者数や予約状況によっては診療終了が大幅にずれ込むことも日常的です。「時間通りに終わったためしがない」という声は、開業医の間でよく聞かれます。

診療以外の業務時間(経営・スタッフ管理・事務)

開業医の労働時間において見落とされがちなのが、診療時間外の業務です。具体的には以下のような業務が診療の前後や休診日に発生します。

  • レセプト確認・請求業務のチェック
  • スタッフのシフト管理・採用・面談
  • 医薬品・医療材料の発注・業者対応
  • 設備メンテナンスや行政手続き対応
  • 経営数値の確認・税理士や社労士との打ち合わせ
  • ホームページやSNSの更新・集患施策の検討

他のスタッフに任せられる業務もあるかもしれませんが、診療時間以外で上記業務の時間もかかってきます。

診療科による差異

診療科によって労働時間の傾向は大きく異なります。内科・小児科・皮膚科などは患者数が多くなりやすく、繁忙期(インフルエンザ流行期など)には診療が長引くことがあります。
一方、美容皮膚科や一部の自由診療系クリニックは、予約制を徹底しやすく、比較的時間管理がしやすい傾向があります。整形外科やリハビリを伴う診療科は、スタッフとの連携業務が多くなる分、マネジメントに時間がかかることも特徴です。開業を考える際は、自分の専門診療科における時間的特性を事前に把握しておくことが重要です。

 

勤務医との比較|何が変わり、何が変わらないか

診察中の風景

オンコール・当直からの解放

開業によって確実に解放される負担があります。代表的なのは当直・オンコールです。多くのクリニックは入院機能を持たないため、有床診療所でない限り深夜・休日の緊急呼び出しはほぼなくなります。これは特に子育て中の医師や、体力的な負担を感じていた医師にとって大きなメリットです。「夜にしっかり眠れるようになった」「家族と夕食を共にできる日が増えた」と感じる開業医も多いでしょう。
また、病院内の複雑な人間関係や上下関係のストレスから解放されることも、精神的な余裕につながると感じる開業医は多いです。

代わりに生まれる「経営者としての責任」

一方で、新たに増える負担もあります。最も大きいのは経営責任です。スタッフが急に退職した場合の対応、クレーム処理、資金繰りの管理——これらはすべて院長の責任です。勤務医時代は誰かが担ってくれていた業務を、自分で判断・実行しなければならない場面が増えます
また、スタッフの給与・家賃・医療機器のリース料といった固定費は、患者数に関わらず毎月発生します。売上に関係なく支払いが必ず毎月発生するというプレッシャーは、勤務医時代にはなかったものです。

診療以外のこと、経営のことなどで頭がいっぱいになり、診療に集中できないと感じる開業医も多く、このギャップを事前に理解しておくことが重要です。

 

働き方改革は開業医に適用される?

働き方改革とグラフ

医師の働き方改革の対象範囲の整理

2024年4月から本格施行された医師の働き方改革は、主に病院勤務医を対象とした時間外労働の上限規制が中心です。厚労省の発表によると、月80時間を超える残業時間の勤務医が約4割、さらにその2倍の160時間を超える残業時間の勤務医が約1割いる、とされています。医師の長時間労働によって、医療ミスや医師の健康を損なうという懸念が考えられます。こういった状況から、医師の働き方改革により、勤務医の時間外労働を原則年960時間以内(特定の条件下では1,860時間以内)に制限されております。

ですが、開業医(個人事業主)自身はこの規制の対象外となります。院長自らの労働時間に法的な上限は設けられていません。つまり、自分の働き方は自分で律するしかないということでもあります。

個人クリニックへの影響と注意点

働き方改革については、開業医本人への直接適用はないかもしれませんが、例えば非常勤医師を雇用している場合は、その医師の労働時間管理が必要になります。また、社会全体として医師の長時間労働への意識が高まる中、開業医自身も健康管理の観点から働きすぎに注意する必要があります。

スタッフへの適用義務と院長の管理責任

クリニックで雇用している看護師・医療事務・その他スタッフには、労働基準法が適用されます。時間外労働の管理・36協定の締結・残業代の適切な支払いなど、雇用主としての義務を果たす必要があります。

開業後にスタッフの労務管理が原因でトラブルになるケースは少なくありません。開業前から社会保険労務士と連携し、適切な労務体制を整えておくことを強くおすすめします。

 

開業医が労働時間をコントロールするための工夫

時計とカレンダーと鉛筆

診療時間・休診日の設計

労働時間を適切にコントロールするうえで、開業前の診療時間設計は非常に重要です。「とりあえず長く開けておけば患者が来る」という考え方は、院長の疲弊とスタッフの離職につながるリスクがあります。

診療圏の患者層や競合クリニックの診療時間を調査したうえで、無理なく継続できる時間設定を行うことが長期的な経営安定につながります。また、週1日の完全休診日を確保することは、院長自身のパフォーマンス維持にも欠かせません。

スタッフへの業務分担・権限委譲

院長がすべての業務を抱え込まないためには、スタッフへの適切な権限委譲が不可欠です。医療事務スタッフにレセプト管理や患者対応の一次窓口を任せる、看護師の担当業務の幅を広げるなど、各スタッフの能力を最大限に活かす仕組みをつくることが重要です。

そのためには、開業時からマニュアル整備や研修体制を整え、「院長がいなくても回るオペレーション」を意識的に構築していくことが求められます。

ITツールの活用

業務効率化において、ITツールの活用は今や必須と言えます。

  • Web予約システム:電話対応の負担を減らし、スタッフの業務効率を向上
  • 自動精算機:会計業務の省力化により、スタッフが他業務に集中できる環境を整備
  • レセコン連携:例えば電子カルテとレセコンの連携が挙げられ、二重入力やミスを防ぐ一体型システムが主流となっています。その他、自動精算機などと連動させることで、事務負担を大幅に軽減できます。

初期投資が必要なものもありますが、中長期的にはスタッフの残業削減や採用コストの抑制につながります。開業時に導入を検討することをおすすめします。

 

まとめ

開業医の労働時間は、週平均50〜55時間と決して短くはありません。診療時間に加え、経営管理・スタッフ対応・事務処理といった診療外業務が10〜15時間程度上乗せされるのが実態です。勤務医時代の当直やオンコールからは解放される一方で、経営者としての責任が新たに加わるため、「トータルの拘束時間が減った」とは言い切れないケースも多くあります。

また、働き方改革の規制は開業医本人には適用されないため、労働時間を律するのは自分自身です。だからこそ、開業前に診療時間の設計・スタッフへの権限委譲・ITツールの活用を組み合わせた仕組みづくりをしておくことが、長く無理なく経営を続けるための鍵となります。

「開業してから考える」では手遅れになることも多く、事前の準備と専門家のサポートが成功への近道です。働き方も含めたクリニック開業のご相談は、ぜひ私たちにお任せください。

 

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