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医療機器はリースor購入 どちらがよい? クリニック開業コラム

 

1.開業準備で悩む医療機器の調達方法

開業準備で悩む医療機器の調達方法

クリニック開業を考える医師にとって、医療機器の調達は非常に重要なステップです。診療に必要な設備を揃えるためには相応の投資が必要であり、どの機器を「購入」するのか、「リース」で導入するのかという判断が、開業後の経営に大きく影響します。

医療機器の導入は大きなコスト要因

医療機器は、開業時にかかる初期費用のなかでも2番目に大きな支出項目に位置づけられます(1位は内装工事費)。たとえば内科開業であれば、心電計やレントゲン装置、超音波診断装置などが必要で、これらをすべて購入した場合、1,000万~2,000万円前後の出費になることも珍しくありません。

そのため、資金面の不安から「医療機器はリースが良いのか?それとも購入か?」と悩む医師は少なくありません。実際、医療機器の導入方法は資金計画に直結する問題であり、診療科目や経営スタイルによって最適な選択が変わってきます。

購入とリースの2択、それぞれの基本とは

まずは、購入とリースの基本的な違いを押さえておきましょう。

 項目 購入 リース
所有権購入者が所有リース会社が所有
初期費用高額(全額一括または借入)月額払いで初期負担を抑えられる
メンテナンス自己管理が基本プランによっては含まれる場合がある
会計処理減価償却の対象経費処理可能(リース料として)
契約自由に売却・変更可能原則、中途解約は不可

このように、それぞれに明確なメリットと制約があります。

2.医療機器購入のメリット・デメリット

医療機器を購入することの最大のメリットは「所有できること」です。長期的に使用する機器や、特殊な設定・カスタマイズが必要な機器に関しては、購入が向いているケースも多くあります。

資産として所有できる

購入した医療機器は自院の資産として計上され、自由に運用・管理が可能です。たとえば開業後に院内のレイアウトを変更したいときや、機器の売却・入れ替えを検討したいときも、自身の裁量で決定できます。

また、リースと比較して長期間使用する場合は、結果的にコストが抑えられることもあります。特に、10年以上使う予定のある耐用性の高い機器では、購入が有利です。

長期使用に向いているが初期費用が高額

デメリットとしては、やはり初期費用が高額になりやすい点が挙げられます。機器によっては数百万円以上かかるため、自己資金ではまかないきれず、金融機関からの借入が必要になるケースもあります。

また、導入後すぐに新モデルが登場したり、診療スタイルの変化で使わなくなる可能性もあるため、慎重な機器選定が求められます。

固定資産税やメンテナンスの管理負担も

購入機器は固定資産として扱われ、固定資産税の課税対象になります。さらに、メンテナンスや修理対応も自己責任で管理する必要があります。

メーカーとの保守契約に加入することで手間を軽減できますが、その分費用も発生します。運用開始後のランニングコストも加味して判断することが重要です。

 

3.医療機器リースのメリット・デメリット

一方、リース契約で医療機器を導入する方法も、多くのクリニックで採用されています。特に近年では、開業初期の資金負担を抑える方法として注目されています。

初期費用を抑えられるのが最大の魅力

リースの最大のメリットは、初期費用を大幅に抑えられる点にあります。月額リース料として支払う形式であるため、一括購入と比べて資金繰りに余裕が生まれます。

また、最新モデルを導入しやすく、機器の導入ハードルが低いのもメリットです。特に高額な画像診断装置(CTやMRIなど)では、リース契約が現実的な選択肢になります。

中途解約不可や長期的コストに注意

ただし、リースにはいくつかのデメリットも存在します。

  • 原則として中途解約ができない
  • 途中で機器を買い取ることが難しい
  • 長期的には購入よりも割高になる場合がある

これらの制約があるため、先を見据えた契約内容の見極めが不可欠です。特に診療スタイルが変わる可能性がある場合や、分院展開を視野に入れている場合には注意が必要です。

所有権はリース会社、自由度には制限も

リース機器の所有権はリース会社にあるため、機器の売却や転用はできません。また、設置場所の変更や使用方法の自由度にも制限が出てくることがあります。

さらに、リース期間満了後には再リース契約を結ぶか、返却して新たに契約し直す必要があり、機器の使用継続には一定の手続きが伴います。

 

4.診療科別に見る!リース向き・購入向きの機器例

医療機器の導入方法は、診療科目や診療スタイルによって最適解が異なります。ここでは、主な診療科ごとに、リース向きの機器と購入に適した機器を具体的に整理していきます。

内科・循環器内科・消化器内科

リース向き機器

・心電計(最新型)
・超音波診断装置(エコー)
・24時間ホルター心電図解析装置

購入向き機器

・ベッド・診察台
・血圧計、体重計などの基本診療機器
・電子カルテ・レセプト端末(長期利用前提の場合)

内科では、画像診断系機器や解析装置は技術進歩が速いためリースがおすすめ。一方、毎日使用する汎用性の高い備品は購入によって長期利用する方が効率的です。

皮膚科・小児科

リース向き機器

・ダーモスコピー
・吸引器、処置用ユニット
・赤外線治療器など

購入向き機器

・診察用LEDライト、無影灯
・スリットランプ(長期間使用するなら)
・冷蔵庫や滅菌器など汎用備品

特に小児科は安全性を最重視するため、信頼性の高い新品機器の購入が推奨されますが、設備面では中古リースの活用でコストを抑えることも可能です。

整形外科・リハビリテーション科

リース向き機器

・X線撮影装置(CR装置含む)
・牽引装置、ウォーターベッド
・電気刺激治療器、温熱治療器

購入向き機器

・超音波治療器(頻繁に使用する場合)
・診察用ベッド、処置用チェア

画像診断やリハビリ用の大型設備はリースの利用が現実的。高価な上にメンテナンスが必要なため、リース契約に保守込みプランを選ぶと安心です。

 

5.資金計画にどう影響する?リース・購入の違い

資金計画にどう影響する?リース・購入の違い

医療機器の導入方法は、クリニックの資金繰り、会計処理、融資交渉にまで影響を与えるため、開業計画の段階から精査が必要です。

借入とのバランスと資金繰りの安定性

購入によって高額な支出が発生すると、開業資金の大部分を医療機器に使ってしまい、他の重要な投資(内装や広告、人件費)に影響を及ぼすことがあります。

一方で、リース契約は初期負担を分散できるため、資金繰りが楽になります。ただし、毎月の固定支出が増えることになるため、収入見込みと合わせて慎重に判断すべきです。

会計処理・減価償却・節税への影響

 項目 購入 リース
会計処理減価償却(資産計上)月々のリース料を経費として計上可能
節税効果長期的には高いが即効性は低いリース料全額が損金算入できる
キャッシュフロー初年度に大きな支出が必要月額定額支払いで安定した支出管理が可能

リースは損金処理が可能なため節税効果が高く、資金調達先にとっても支出構造が見えやすいという利点があります。購入の場合は、資産として計上し減価償却していくことで、長期的な税負担を抑えることが可能です。

金融機関との融資交渉にも関係あり

機器をすべて購入する場合、開業資金の借入額が大きくなり、融資審査に時間を要するリスクがあります。一方、リース活用により初期借入額を減らせば、金融機関の融資判断がスムーズになる可能性があります。

加えて、リース契約による設備投資計画を立てておくと、「事業計画書の明瞭化」「資金の適正配分」といった観点で評価されやすくなります。

 

6.機器選定の失敗事例に学ぶ!注意すべきポイント

医療機器導入の失敗は、想定以上のコスト発生や使いにくさによる診療効率低下など、開業後のクリニック運営に大きな影響を及ぼします。ここでは、よくある失敗例とその対策を紹介します。

「リースにすれば安心」ではない失敗例

ある内科クリニックでは、すべての機器をリース契約にして開業。初期費用こそ抑えられたものの、月々の支払いが積み重なり経常利益を圧迫。さらに中途解約ができないため、診療内容の変更に対応できず、機器が“お荷物化”してしまいました。

  • 対策:  リース契約は「必要な機器に限定」し、リース料の総額と期間を明確に把握したうえで契約すること。

高額機器を購入し経営を圧迫した事例

皮膚科でレーザー機器を購入したものの、予想ほど自費診療が伸びず、高額な設備費を回収できずに経営を圧迫。さらに数年後に最新型が登場し、買い替えが必要になりました。

  • 対策: 導入前に患者ニーズや市場動向を十分に調査し、「収益に直結するかどうか」を判断基準とすることが大切です。

機器選定前に必要な診療戦略の明確化

失敗の根本原因として、「開業後の診療スタイルや収益構造が不明瞭なまま機器を決めてしまった」ケースが多くあります。

医療機器の導入は、「診療内容・ターゲット患者・将来の方針」と密接に関係しています。開業前には、診療戦略を明確にし、それに基づいて機器を選定することが、無駄な投資を防ぐ第一歩です。

 

7.導入コスト以外に見るべきポイントは?

医療機器導入時には、「本体価格」や「月額リース料」に目が行きがちですが、それだけでは本当のコストは見えてきません。導入後に生じる継続的な費用や運用負担も含めて、総合的に判断することが重要です。

メンテナンス契約とランニングコスト

多くの医療機器には、定期的な保守点検や消耗品の交換が必要です。購入の場合、メンテナンス契約を別途締結するケースが多く、年間10万円〜数十万円の出費になることもあります。

リース契約では、保守費用があらかじめ含まれているプランもありますが、すべてがそうではありません。契約内容をしっかり確認し、「点検・修理費用はどこまで含まれているか」を見極めましょう。

また、プリンターや画像出力装置などはトナー・用紙代もかかります。消耗品コストが継続的に発生する機器は、見落としやすいコスト要因のひとつです。

保守体制・トラブル時の対応スピード

診療中に機器が故障した場合、すぐに復旧できなければ診療業務に支障が出ます。特に心電計、レントゲン装置、レセコンなど日常的に使用する機器では、ダウンタイムがそのまま機会損失につながります。

  • 保守拠点が近くにあるか?
  • 電話サポートや代替機の貸し出しはあるか?
  • 対応までの時間はどれくらいか?

これらの確認は、契約前に必ずチェックすべきポイントです。

機器更新・買い替えの見通しを立てる

技術の進歩が速い分野では、数年ごとに新型が発売され、旧機種はサポート終了となる可能性もあります。リース契約であれば契約満了にあわせて機器更新が可能ですが、購入した機器はそのまま使い続ける必要があります。

そのため、あらかじめ「この機器は何年使う予定か」「買い替えの際にはどうするか」といったライフサイクルの見通しを立てることが、無駄な出費や突発的な買い替えリスクを回避するコツです。

 

8.どちらにも対応できる「段階的導入戦略」とは

リースと購入、それぞれにメリット・デメリットがあるからこそ、両者をうまく組み合わせた「段階的導入戦略」が有効です。すべてを開業時に揃えるのではなく、時期・目的・資金状況に応じて導入を分散する方法が、今の開業スタイルに合っています。

開業初期はリース中心、収益化後に購入へ

開業直後は、患者数の予測が立ちにくく、キャッシュフローも不安定です。このタイミングで高額な機器を購入するのはリスクが高いため、以下のような方針がおすすめです。

  • 開業時: 診療必須機器のみ、リースまたは中古導入
  • 開業半年〜1年: 経営が安定してきたタイミングで高頻度使用機器を購入
  • 開業2年以降: 自費診療や診療拡張に合わせて新機器を追加購入またはリース切替

このように段階的に設備を充実させていくことで、初期投資を抑えながら、機器の無駄買いを避けることができます。

スモールスタートのメリット

段階的導入の背景にあるのが、「スモールスタート」という考え方です。これは、最初から100%の設備を整えるのではなく、「60〜70%の設備でまずスタートし、必要に応じて拡張」するという柔軟な開業スタイルです。

特に以下のようなケースで有効です。

  • 立ち上げ直後の経営状況を見て判断したい
  • 自費診療の反応を確認してから拡張したい
  • 競合状況により柔軟に対応したい

設備に限らず、人員配置や診療時間、メニュー内容などと連動させて考えると効果的です。

「必要な時に必要なだけ」の導入戦略

近年の開業成功事例では、「必要な時に必要なだけ」の設備投資を行い、リース・購入・中古活用を組み合わせているケースが増えています。大事なのは、「資金とリターンのバランス」と、「機器導入が診療効率に直結しているか」を常に見極める姿勢です。

 

9.迷ったら専門家に相談を!メディシーの支援紹介

迷ったら専門家に相談を!メディシーの支援紹介

医療機器の導入は、診療科・資金力・今後の戦略によって最適解が変わる、非常に判断が難しい分野です。そうしたときこそ、開業支援の専門家に相談する価値があります。

多診療科での導入実績と客観的なアドバイス

メディシーは内科、皮膚科、小児科、整形外科など幅広い診療科の開業を支援しており、実際の成功・失敗事例をもとに最適な導入戦略を提案します。

「他院ではどのような導入手順で成功しているのか?」といった情報も得られるため、情報の非対称性によるリスクを軽減できます。

メディシー無料相談で開業準備を一歩前へ

医療機器の導入に不安を感じているなら、まずは無料相談で現状を整理することから始めてみてください。診療方針・資金状況・診療圏などを踏まえた、現実的な提案が得られます。

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