
クリニックの人件費率|個人・医療法人で何%が危険ライン?
人件費率とは?クリニック経営で見るべきポイント

クリニック経営において「人件費率」は、収益構造の健全性を判断するための重要な指標のひとつです。
人件費率とは、売上(医業収益)に対して人件費がどの程度を占めているかを示す割合であり、一般的には以下のように計算されます。
ここでいう人件費には、スタッフの給与・賞与だけでなく、法定福利費や社会保険料なども含まれます。つまり、単純な「給与総額」ではなく、クリニックが人材に投じている総コストを把握する必要があります。
さまざまな業界・職種もそうですが、クリニックは「人」が価値を生み出します。医師による診療、看護師や医療事務、リハビリスタッフなど、多職種の連携によって医療サービスが成立しています。人件費が発生することは不可避ですが、過剰になりすぎると経営を圧迫する要因にもなります。
特に保険診療が中心のクリニックでは、診療報酬によって収益がある程度固定されるため、売上を急激に伸ばすことが難しいです。一方で、人件費は採用や昇給によって増加しやすく、コントロールを誤ると利益を圧迫する要因となります。
また、人件費率だけで考えるのではなく、「患者数」「診療単価」「診療科の特性」などとあわせて総合的に見る必要があります。
人件費の定義
個人クリニック・医療法人クリニックにおける人件費定義の違いとして、院長の報酬が含まれるかどうか?が挙げられます。
個人クリニックの人件費
スタッフ給与、法定福利費、賞与など。※院長の報酬は含まれない
医療法人クリニックの人件費
スタッフ給与、法定福利費、賞与、理事長・医師の役員報酬など。
クリニック人件費率の目安

クリニックの人件費率は、運営形態によって大きく異なります。一般的に、個人開業のクリニックでは20〜30%前後、医療法人では40〜50%前後となるケースが多いです。医療法人ではスタッフ数が増えやすいことに加え、管理業務や組織運営に関わるコストも含まれるためです。
下記は、令和6年(入院診療収益無し)診療所のデータです。
| ※入院診療収益なし (単位:千円) | 医療収益 | 人件費 | 人件費率 |
| クリニック(個人) | 90,142 | 25,711 | 28.4% |
| クリニック(医療法人) | 169,911 | 88,243 | 51.0% |
参考:第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)「一般診療所(集計2)」
クリニック(個人)の人件費率は約28%、クリニック(医療法人)の人件費率は51%が一つの目安と言えます。
また、1つ前の調査「第24回医療経済実態調査(令和4年)」と比べると、人件費は上がっており、今後も上昇する可能性も考えられます。
比較!「第24回医療経済実態調査(令和4年)」入院診療収益なしのデータ「クリニック(個人)」 人件費:22,748千円、 人件費率24.6%、
「クリニック(医療法人)」 人件費:82,108千円、 人件費率49.0%
「50%」が重要な分岐点?
クリニック経営では、人件費以外にも以下の固定費が発生します。
- 家賃・テナント費用
- 医療機器リース
- 医療材料費・消耗品
- 水道光熱費
これらを合計すると、一般的に売上の30%前後を占めるケースが多いです。人件費50%、その他費用30%とすると、利益として残るのは20%未満となり、投資余力や経営の柔軟性が大きく制限される状態になります。状況により目安はさまざまではありますが、物価高や賃上げの影響を受けると、バランスが一気に崩れる可能性があります。
一概に、人件費率が高い=危険とも限りません。例えば、診療科によっても適切な人件費率は変わります。開業初期で患者数がまだ少ない段階である、将来の増患を見越した先行採用をしている、リハビリ・在宅医療など人手依存型の診療がある、という場合も人件費が高くなるかもしれません。
診療科別|人件費率はどのくらい違うのか

クリニックの人件費率は、単純に高い・低いで判断するものではなく、診療科ごとの特性によって大きく変わる点に注意が必要です。同じ売上規模であっても、必要とされる人員構成や診療スタイルが異なるため、人件費率の適正ラインも変わってきます。
もし他クリニックと比較したい場合は、同じ診療科の中で自院が適切な人件費率になっているかどうか?を判断するようにしましょう。
人件費が比較的低くなりやすい診療科
まず、人件費率が比較的低く抑えやすいのが、以下のような診療科です。
一般内科、皮膚科(保険中心)、一部の専門外来(単科型)
これらの診療科は、医師1名と少人数のスタッフで運営できるケースが多く、そういった場合は人員構成がコンパクトになりやすいからです。また、診療の回転が比較的早く、患者数を確保しやすいことから、売上に対して人件費の割合が抑えられる傾向があります。
人件費率が上がりやすい診療科
一方で、以下のような診療科では人件費率が高くなりやすい傾向があります。
小児科(対応工数が多い)、整形外科(リハビリスタッフが必要)、在宅医療(訪問体制が必要)
一概には言えませんが、診療の性質上、スタッフの関与が多く人手が必要な傾向にあります。特に整形外科では、理学療法士などの専門職を複数配置するケースも多く、人件費が占める割合が大きくなりやすいです。
美容・自由診療は考え方が異なる
美容クリニックなど自由診療が中心の分野では、保険診療とは異なる考え方が必要です。
自由診療では診療単価が高いため、人件費率が高くても利益が確保できるケースがあります。そのため、単純に「人件費率が高い=危険」とはならず、売上構造とのバランスで判断する必要があります。
なぜ人件費率が上がるのか|よくある原因と構造

人件費率が高い状態にある場合、「人件費を削減しよう」と考えがちですが、なぜその状態になっているのかを考えることが一つポイントになってきます。
原因① 患者数不足(売上の問題)
売上が低く、売上に対して人件費が相対的に高くなっているケースです。
例えば、「開業直後で患者数が少ない」「集患がうまくいっていない」「立地や競合の影響で来院数が伸びない」といった状況では、スタッフ数が適正でも人件費率は高くなります。
この場合は「人を減らす」のではなく、売上(患者数)をどう伸ばすかが本質的な課題となります。
改善ポイントMEO対策や導線(予約のしやすさ・口コミなど)を見直し、来院数そのものを底上げすることが最優先です。

原因② 過剰人員(コストの問題)
一方で、明らかに人員が多すぎるケースもあり得ます。
「業務量に対してスタッフが多い」「シフトに無駄がある」「属人的な業務が多く効率が悪い」という状況です。採用時に余裕を持たせすぎた場合や、退職リスクを恐れて人員を増やしすぎてしまった、などが原因となります。
改善ポイント業務量ベースでシフト作成を見直し、“必要な時間に必要な人数だけ配置する”運用へ。
原因③ 診療効率の低さ(オペレーションの問題)
見落とされがちなのが、診療効率の問題です。
例えば、「受付や会計に時間がかかる」「医師の診療時間が非効率」「スタッフ間の連携が悪い」といった状況では、同じ人数でも処理できる患者数が減るため、結果として人件費率が上がります。
つまり、「人が多い」のではなく「効率が悪い」というケースです。
改善ポイント受付〜会計の動線見直しやITツール導入により、1人あたりの対応患者数を引き上げることが重要です。

原因④ 給与水準のミスマッチ
地域相場や役割に対して、給与が高すぎる場合も人件費率上昇の要因となります。
「相場より高い給与設定」「昇給ルールが曖昧」「評価制度が機能していない」こうした状態では、売上が伸びても人件費がそれ以上に増加し、利益が残りにくくなります。
改善ポイント地域相場と役割に応じた給与テーブルを整備し、評価と連動した昇給ルールを明確化することが必要です。
重要なのは「どの原因かを見極めること」
ここまで見てきたように、人件費率が高くなる原因は一つではありません。人件費が高い→人を減らすという短絡的な考えは危険です。
売上の問題なのか、人員の問題なのか、オペレーションの問題なのかを切り分けずに対策を行うと、かえって経営を悪化させる可能性があります。
開業前の設計が、その後の人件費率を左右する

- 立地選定(患者数の見込み)
- 診療科の選択
- 人員計画の設計
- 収支シミュレーション
これらの初期設計が適切でない場合、開業後にどれだけ改善を試みても、構造的な課題を抱え続けることになります。
メディシーでは、物件探しから開業後のフォローまでを一貫して支援する「ワンストップ型」のクリニック開業支援を提供しています。
これまで多数のクリニック開業を支援してきた実績をもとに、個別状況に応じた最適なアドバイスを行っています。初期構想から開業後の運営まで、すべてのフェーズで伴走支援が可能です。
「どこに相談すればいいか分からない」「本業が忙しくて準備が進まない」「立地選定に自信がない」「機器の選び方がわからない」「資金計画が不安」…
一人で悩まないことも重要です。信頼できるパートナーとともに計画を立てることで、開業成功率は格段に高まります。
診療圏調査と立地選定
開業地の選定は、将来にわたって患者数を左右する重要なポイントです。 将来的な集患を見据えたエリア調査を実施し、競合状況や人口動態を分析。最適な立地選びをサポートします。
資金調達・事業計画支援
収支シミュレーションを含む事業計画の策定から、銀行融資や助成金の相談対応まで、安心してスタートできる体制を整えます。
建築相談
クリニックの理念やコンセプトに基づいた、内装プラン・レイアウトの提案ができる、医療機関を中心に手掛けている業者をご紹介いたします。
専門業者であるので、患者様やスタッフの導線を考えたレイアウトになり、居心地のよい・仕事の効率のよい理想のクリニックができあがります。
広告
医療機関の広告は、医療法などの規制を受けており、内容についても保健所などから指導があります。しかし、クリニックの存在を地域の方々に認知していただかないと、集患に繋がらないので、開業時の広告は必須です。
広告宣伝の方法もパンフレット・チラシ・駅看板や電柱広告など多岐に渡りますが、その中でもホームページは、医院側から情報発信できる有効な広告媒体なので、ホームページの開設はおすすめしております。
各種手続き・スタッフ採用・開業後のサポートも万全
保健所や医師会への開設申請、就業規則や社会保険手続き、スタッフ採用の支援に加え、開業後の増患対策や運営改善まで丁寧にフォローします。
あなたのビジョンと熱意を、現実の成功へと変えるために。
未来の理想的なクリニックづくりを、メディシーが全力でサポートいたします。













