キャッシュレス決済は導入する?メリット&デメリット|クリニック開業
1.キャッシュレス決済とは?クリニックにおける基礎知識
キャッシュレス決済とは、現金を使わずに代金を支払う方法の総称です。具体的には、クレジットカード、QRコード決済、電子マネーなどが該当します。これらは飲食店や小売店を中心に広がってきましたが、近年では医療機関、特にクリニックにおいても導入が進んでいます。
医療機関におけるキャッシュレス化の背景
キャッシュレス化の背景には、社会的・経済的要因があります。
- 新型コロナウイルス感染症をきっかけに、非接触ニーズが拡大したこと
- 働き方改革による受付業務の効率化ニーズの増加
- 国や自治体によるキャッシュレス促進政策
2020年以降は、コロナウイルスをきっかけに非接触ニーズが高まり、「現金を使いたくない」という患者の声がこれまでより増えました。さらに国のキャッシュレス促進もあることから、現代においてクリニックの信頼性や先進性を示す指標としてキャッシュレス導入が注目されています。
導入の広がりと今後の動向
公益財団法人日本医療機能評価機構の資料や民間調査を見ても、都市部を中心にキャッシュレス対応クリニックの割合は上昇傾向にあります。とりわけ自由診療を行う美容系や健診クリニックではもはや“必須インフラ”となりつつあり、今後は保険診療メインの一般クリニックでも導入が進むと予想されます。
2.キャッシュレス決済の種類と特徴|クレジット・QR・電子マネーの違い
キャッシュレス決済にはいくつかの種類があり、それぞれで利用者層や運用コスト、使い勝手に違いがあります。以下に主な決済手段とその特徴を紹介します。
クレジットカード決済
特徴
- Visa、Mastercard、JCBなどが主要ブランド
- 高額医療や自由診療の支払いにも適している
- 月額利用料や決済手数料がやや高め
向いているケース
- 健診・自由診療が多い
- 高所得層やビジネスパーソンの利用が多いエリア
QRコード決済
特徴
- スマートフォンに表示されるQRコードを読み取り決済
- PayPay、楽天ペイ、d払い、au PAYなどが主流
- 初期費用無料・決済手数料が低い場合が多い
向いているケース
- 若年層・ファミリー層が多い
- スピード感ある決済体験を提供したいクリニック
電子マネー(ICカード決済)
特徴
- Suica、PASMO、楽天Edy、nanaco、WAONなど
- タッチ決済が可能で、操作が簡単
- 初期導入に専用リーダーが必要な場合もある
向いているケース
- 通勤・通学患者が多い立地(駅前など)
- 少額決済が多い診療科(例:小児科、耳鼻咽喉科)
組み合わせ導入も検討を
利用者の層やクリニックの方針によって最適な決済手段は異なりますが、実際には「クレジットカード+QR決済」など複数の決済手段を併用するクリニックが増えています。
3.クリニックでキャッシュレス決済を導入するメリット
キャッシュレス決済は単なる「支払い方法の追加」ではなく、患者満足度や業務効率、経営面に好影響を与える要素が多く含まれています。ここでは主要なメリットを3つの観点から解説します。
患者の利便性と満足度の向上
- 「財布を持たずに診察を受けたい」「クレジットカードでポイントを貯めたい」といった患者の多様なニーズに応えられる
- インバウンド患者(外国人)への対応もスムーズになる
受付業務の効率化とミスの削減
- 釣銭の準備・管理が不要になるため、会計処理時間が短縮
- 領収証の印刷やレジ締めの手間が減り、スタッフの負担軽減
- 現金の受け渡しによるヒューマンエラー(渡し間違い、受け取りミス)を防止
経営の透明性と収益管理の向上
- 決済データが自動的に電子記録されるため、経理処理が簡易化
- 日次・月次の収支把握がリアルタイムで可能に
- 複数院展開している場合でも一元的な売上管理がしやすい
4.キャッシュレス決済導入のデメリット・注意点とは?
利便性の高いキャッシュレス決済ですが、導入に際してはいくつかのデメリットや注意点も存在します。トラブルを防ぐためには、導入前にしっかりと理解し、対策を講じることが大切です。
導入・運用コストが発生する
- 初期費用: 決済端末の購入費用、設置工事費など
- 月額費用: システム利用料、保守費用
- 決済手数料: 決済金額の3%前後が一般的(クレジットカードの場合)
特に保険診療メインのクリニックでは利益率が高くないため、手数料負担が重く感じられるケースもあります。収益性とのバランスを考えた上で、対応ブランドや決済手段を選定しましょう。
通信環境・システムトラブルのリスク
キャッシュレス決済はネット接続が前提となるため、通信障害や端末の故障が発生すると、会計業務が滞る恐れがあります。
対策としては、
- 安定した回線環境(光回線、LTEルーターの併用)
- バッテリー式端末の予備
- 現金対応との併用
など、万が一のトラブルに備えた体制整備が求められます。
患者への説明が必要な場合もある
高齢者層を中心に、「カードを使いたくない」「QRコードが使えない」という声も根強くあります。すべての患者に一律でキャッシュレスを強制するのではなく、現金とのハイブリッド運用を前提に、「使いたい人が安心して使える環境づくり」が重要です。
5.患者のニーズとキャッシュレス決済|導入で差別化できる?
「本当にキャッシュレス決済が患者に求められているのか?」という疑問を持つ方も多いかもしれません。しかし近年の患者動向や口コミを見ると、“キャッシュレス対応かどうか”が選ばれるクリニックの一要素になりつつあることが分かります。
若年層・子育て層はキャッシュレスを前提に行動
- クレジットカードでポイントを貯めたい
- スマホだけで完結したい(Apple Pay・PayPayユーザー)
- 銀行に立ち寄る時間を省きたい
こうした行動は、特に都市部や駅近エリアでは標準的な感覚となっています。“支払いのしやすさ”が通いやすさに直結するため、利便性の高さは確実に差別化ポイントとなります。
Google口コミやSNSでの反応にも影響
キャッシュレス未対応のクリニックでは「現金しか使えないのが不便」「時代に合っていない」といった口コミがつきやすく、新規患者の獲得にマイナス影響を与える可能性もあります。反対に、「クレジットも使えて便利だった」「スムーズに会計が済んだ」などの評価があれば、良好な評判形成にもつながります。
6.開業時におすすめのキャッシュレス決済サービスと選定ポイント
キャッシュレス決済の導入を検討する際には、数多くのサービスの中からクリニックに合ったものを選ぶ必要があります。
サービス選定のチェックポイント
- 決済手数料の水準: 月商に対するインパクトが大きいため要確認
- 対応ブランドの種類: 地域や患者層に合ったブランドに対応しているか
- レセコン・電子カルテとの連携性: 経理処理や会計作業の手間を減らすには重要
- サポート体制の有無: トラブル時の対応スピードや使い方説明の有無
とくに開業時は、「開業パッケージ」として決済端末を組み込めるベンダーを選ぶと、導入がスムーズです。
7.キャッシュレス導入の手順と導入時のポイント
キャッシュレス決済を導入する際は、「決済手段を選んで申し込めば完了」といった単純な話ではありません。開業準備と並行して進める必要があるため、計画的にステップを踏むことが重要です。
ステップ1 導入目的の明確化とニーズ把握
まずは「なぜキャッシュレスを導入するのか?」という目的を明確にします。主な目的は以下のいずれか、または複数が該当するはずです。
- 患者の利便性向上・集患力強化
- スタッフ業務の効率化
- 経営管理のデジタル化
- 自由診療への対応強化
同時に、地域の患者層や想定患者の属性(年齢・通院手段・支払傾向など)を調査して、どの決済手段に対応するかの方向性を固めます。
ステップ2 サービスの選定と契約
上記をふまえ、実際の決済サービスを比較検討します。以下のような要素を考慮して選定しましょう。
- 初期費用・手数料・月額費用の有無
- 対応ブランドの種類(Visa/Mastercard/PASMO/PayPayなど)
- 端末機器の設置スペースや電源要件
- 複数院経営を想定した場合の一元管理性
選定後、導入サービス事業者と契約を行います。医療機関向けの支援に慣れた事業者であれば、レセコンとの連携やインボイス対応なども含めた提案を受けられることがあります。
ステップ3 導入準備とスタッフ研修
機器の納品・設定作業後は、院内スタッフ向けのトレーニングを行います。たとえ操作が簡単でも、下記のような状況に備えて対応を決めておくと安心です。
- 通信障害時の対応フロー
- 現金との併用運用ルール
- 初回利用者への説明方法
また、LINEや院内掲示物、Webサイトでの「キャッシュレス対応のお知らせ」も患者周知のために行いましょう。
8.キャッシュレス決済と診療報酬の関係|領収処理の工夫とは
クリニックの会計では、「診療報酬明細書(レセプト)」と「領収書発行」の関係性があるため、キャッシュレスとの連携や対応方法に注意が必要です。
医療機関特有の会計処理
保険診療では、1割〜3割の患者負担額を現場で徴収し、残額はレセプト請求で保険者に請求します。これに対して、キャッシュレス決済を導入する際には以下のような点が検討対象になります。
- 決済手数料の会計処理方法
- 会計ソフト・レセコンとの連動可否
- 「現金」「カード」「QR」などの内訳記録
正確な帳簿管理と領収処理を行うことで、税務調査や医療監査にも対応しやすくなります。
ポイント1 医療費控除対応の領収書発行
キャッシュレスでも、領収書の発行は必須です。とくに医療費控除を申告する患者にとっては、「医療機関名入りの領収証」が重要な証憑となります。
- 決済完了後、紙領収書 or 電子領収書を必ず発行
- 電子カルテや会計ソフトと連携して自動発行できる仕組みが理想的
ポイント2 手数料の負担と経費処理
多くのキャッシュレス決済サービスでは、売上に対して3%前後の決済手数料が発生します。この金額は、クリニック側の経費として計上されますが、「どの診療行為に対する手数料か」を正確に管理しておく必要があります。
- 明細ごとに決済種別を記録できる仕組みを用意
- 税理士や会計事務所と事前に運用ルールを整備
このように、キャッシュレスと診療報酬は一見別の領域でも、実務レベルでは密接に関わってくるため、専門家のサポートを得ながらの導入が望ましいといえます。
9.まとめ|クリニック開業時、キャッシュレス導入の判断基準は?
クリニックのキャッシュレス決済導入は、単なる「時代の流れ」への追従ではなく、患者体験・スタッフの業務効率・経営判断力のすべてに寄与する重要な経営施策です。
本記事で紹介したように、キャッシュレス導入には次のようなメリットがあります。
- 患者の満足度・リピート率の向上
- 会計・経理業務の効率化とミス削減
- 経営の見える化と判断スピードの向上
一方で、費用負担・通信環境・高齢患者対応など、事前に検討すべき注意点や課題も存在します。したがって導入時には、以下のような判断基準が参考になります。
判断基準 | チェックポイント |
---|---|
患者層 | 若年層・ビジネス層・訪日外国人が多いか? |
診療科 | 自由診療の割合が高いか? |
立地 | 駅前・商業地など利便性重視のエリアか? |
業務効率 | 現金会計にかかる手間・人件費が大きいか? |
経営方針 | デジタルを取り入れた効率的な運営を目指すか? |
開業当初は現金対応のみでスタートし、患者のニーズを見ながら段階的にキャッシュレス対応を拡大するという方法も一つの選択肢です。
いずれにしても、患者に選ばれ、スタッフが働きやすく、経営が見えるクリニック運営を実現するためには、キャッシュレス決済は非常に有効なツールといえるでしょう。
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