小児科開業成功の秘訣｜押さえるべき10ポイント

小児科の開業で“後悔しないために”知っておくべきこととは？

「小児科を開業したいけれど、何から始めたらいいのかわからない」

「地域に貢献できるクリニックを作りたいが、リスクが怖い」

このように悩まれる先生方は少なくありません。

医師として経験を積み、患者と真摯に向き合ってきたからこそ、開業という一大決断には慎重になるものです。とくに小児科は、対象患者が「子ども」であることから、患者本人のみではなく「保護者（親）」の満足度や信頼を得る必要があるという特有の難しさがあります。

さらに、人口減少・少子化が進む今、ただ開業するだけでは集患が難しく、「思ったより来院が少ない」「医療収入が伸び悩む」といったケースも多く見られます。

こうした背景から、小児科の開業には「特有の戦略」と「地域ニーズの見極め」が必要不可欠です。本記事では、「小児科開業ポイント」というテーマに沿って、開業準備の具体的なステップや注意点、成功するための実践的なノウハウを網羅的に解説します。

医療系開業支援のプロフェッショナルである【Medisea（メディシー）】が、これまでの支援実績と成功事例をもとに、「失敗しない小児科開業」のためのポイントを徹底解説します。これから開業を検討される先生方にとって、本記事が一歩目の確かな道しるべとなれば幸いです。

１．なぜ今、小児科の開業が“差別化”と“地域密着”で成功するのか？

◆ 医療ニーズの「質」が変化している

少子化が進む中で「小児科の需要は減っているのでは？」と感じる方もいるかもしれません。しかし実際には、都市部・郊外にかかわらず、小児科医の存在は地域の子育て世代にとって非常に重要であり、特に共働き世帯の増加により「相談しやすい身近な医療機関」のニーズが高まっています。

また、ワクチン接種や定期健診など「予防医療」が重視される今、長期的に患者と関係を築いていく小児科の立ち位置はますます重要になっています。

◆ 子ども本人＋親を顧客とする「2重構造」の診療モデル

小児科開業の特徴として、患者は子どもである一方、実際に医療サービスの良し悪しを評価し、再来院の判断をするのは「保護者」であるという点が挙げられます。

そのため、診療の質だけでなく、

医師・看護師の対応力
院内の清潔感や安心感
スムーズな受付・予約システム
待ち時間の少なさやキッズスペースの有無

など、いわゆる「非医療的な満足度」も、クリニックの評価に大きく影響します。

このような2層構造の「顧客満足度」を設計・運営できるかどうかが、リピート率や地域での評判に直結します。

◆ 差別化できるポイントが多い＝経営戦略の自由度が高い

小児科は、診療内容が比較的標準化されているため、差別化がしやすい診療科でもあります。

例えば、

アレルギー専門外来を併設する
乳幼児向けの育児相談を実施する
病児保育室やオンライン診療との連携
平日夜間・土日診療の導入

など、地域の子育て世代が「こんなクリニックがあったら嬉しい」と思える工夫を組み込むことで、圧倒的に選ばれやすいクリニックを作ることができます。

◆ 小児科開業の市場としてのチャンス

特に郊外エリアでは、「大手病院の小児科外来が混雑している」「通うには距離がある」といった不満を抱える保護者が多く、こうした場所では“ちょうど良い距離感の小児科”が歓迎される傾向にあります。

また、医療モールや複合施設への出店で、薬局や他科との連携を取ることも可能になり、経営の安定化にもつながります。

◆ 専門的な開業支援を受けることで成功確率は飛躍的に向上する

小児科の開業は、医療知識だけで乗り越えられるものではありません。

立地選定、資金調達、スタッフ採用、内装設計、広告戦略など、経営・集患・法務・人事など多岐にわたる知識が求められます。

このような総合的サポートを提供しているのが、開業支援サービス「Medisea（メディシー）」です。

医療業界特化のノウハウをもとに、「成功する開業」のロードマップを一緒に描き、実行まで伴走支援します。

２．小児科開業場所の選定｜失敗しない立地と診療圏調査

◆ 小児科開業の成否は「立地」で7割決まる

開業医の多くが口を揃えて言うのが、「場所選びで成功が決まった（あるいは失敗した）」ということです。とくに小児科は患者層が明確なため、「親子が通いやすいか」「近くに競合がいるか」という視点が立地選定の鍵となります。

小児科にとって理想的な立地条件は以下の通りです。

ファミリー層の多い住宅地に近い
周囲に保育園・幼稚園・小学校がある
駐車場スペースが確保できる or 駅から徒歩圏内
競合の小児科と一定の距離がある（診療圏が被らない）
スーパーマーケットやドラッグストアが近くにある（利便性）

これらを踏まえ、「便利さ」だけでなく「日常生活動線にあるか」「母親目線で安心して通えるか」までを徹底的に見極めることが重要です。

◆ 診療圏調査は“客観的な数字”をもとに判断する

開業場所の選定で多くの医師が犯しがちなミスが、「自分の感覚だけでエリアを決めてしまう」ことです。

たとえ通勤時に人が多いエリアでも、実は子育て世代が少なかったり、すでに競合の小児科が飽和しているケースもあります。

そのため、診療圏調査（商圏分析）を行い、

人口構成（0～14歳人口の分布）
世帯構成（子育て世帯の多さ）
保育園・小学校の分布
近隣クリニック数とその診療科
現在の患者流入・流出傾向

といったデータをもとに立地の“勝ち筋”を見つけることが、失敗しない第一歩です。

◆ メディシーが行う診療圏調査の精度

Mediseaでは、小児科開業に特化した診療圏調査を行っており、

公的統計（国勢調査、住民基本台帳など）
学区・子育て支援制度の有無
医療モールや再開発エリアの動向
将来的な人口推移

までを組み込んだ分析を提供しています。

「この地域でどれだけの来院が見込めるのか」を定量的に可視化し、開業地の最適化をサポートいたします。

→診療圏調査の依頼はこちらから

３．資金計画と融資戦略｜いくら必要？どう調達？

◆ 小児科開業に必要な初期費用の目安

小児科の開業には、最低でも5,000万円～7,000万円程度の初期投資が必要とされています。

内訳（目安）は以下の通りです。

テナント契約・改装費 1,000～2,000万円
医療機器・内装設備　 1,000～1,500万円
広告宣伝費（開業前後）　 100～300万円
スタッフ採用・教育費 100～200万円
運転資金（半年分） 1,000～1,500万円
その他（保険、予備資金） 500～700万円

とくに注意すべきは、運転資金の確保です。開業直後は患者数が不安定なため、最低でも6か月分の固定費（家賃、人件費など）は確保しておく必要があります。

◆ 資金調達は「金融機関の選定」と「事業計画書の質」がカギ

小児科開業では、日本政策金融公庫や地域金融機関（信用金庫、地方銀行）などからの融資が一般的です。

重要なのは、「どこから借りるか」ではなく「どうやって納得させるか」

そのためには、説得力のある事業計画書を作成する必要があります。

診療方針・対象患者層（差別化ポイントを明示）
来院予測（診療圏調査に基づく）
売上・利益計画（3年分）
初期投資と返済計画のバランス
自己資金の有無（信頼度向上）

◆ 自己資金は「信頼」の証明となる

金融機関は、「この人は開業にどれだけ本気なのか」を見ています。

その判断材料として「自己資金」が重要になります。

理想は全体の20～30%程度（1,000万〜2,000万円）

ただし、医師としてのキャリアが長い場合や事業計画の完成度が高ければ、自己資金が少なくても融資が通るケースもあります

◆ 補助金・助成金の活用も視野に入れる

近年では、医療機関の開業や地域医療促進を目的とした助成金や補助金制度も拡充しています。

特に以下のようなケースで活用可能です。

・地方自治体による地域医療支援制度
・医療DX導入に関する補助（電子カルテ、オンライン診療など）
・女性医師の開業支援プログラム

４．内装・医療機器選定のポイント

◆ 「安心感」と「回転率」を両立させる内装設計

小児科クリニックの内装は、子どもが“怖がらずに来られる雰囲気”を演出することが重要です。

ただし、「可愛らしさ」だけを重視すると、かえって動線が悪くなり、診療効率が下がることもあるため、安心感と機能性のバランスを意識する必要があります。

内装設計で意識すべき主なポイントは以下のとおりです。

キッズスペースの設置（衛生・安全に配慮した柔らかい床素材）
ベビーカーのまま入れる設計
トイレにおむつ替え台・子ども用便座の設置
待合室と診察室・処置室のスムーズな導線
親子が一緒に座れるソファタイプのチェア

さらに、感染症対策として「動線分離」や「換気計画」の導入も必須です。とくに発熱外来を導入する場合は、一般診療と分けた導線設計が求められます。

◆ 小児科で必要な医療機器の選定

小児科は、他の診療科と比べて大型機器への依存度は高くありません。その分、適切な機器を絞って導入することで、初期投資を効率的に抑えることができます。

導入必須の基本的な医療機器は以下のとおりです。

聴診器・体温計・パルスオキシメーター
診察用ベッド・身長体重計
吸引器・ネブライザー
予防接種用の冷蔵庫
血液検査・尿検査キット（必要に応じて）

また、将来的にアレルギー外来や乳児健診などの機能を拡張することを見越し、汎用性の高い機器を選定しておくと無駄がありません。

５．スタッフ採用と人材定着の秘訣

◆ 小児科スタッフに求められる“人柄”と“専門性”

小児科では、看護師や受付スタッフの「第一印象」や「コミュニケーション力」が集患に直結します。

とくに保護者は、医師だけでなくスタッフ全体の対応を細かく観察しており、安心して任せられる雰囲気づくりが何より大切です。

採用時には以下のような基準を意識しましょう。

子どもに対する対応に慣れている（または適性がある）
柔らかい話し方や丁寧な所作
多忙時でも笑顔を保てる余裕
ワクチン接種の補助経験（看護師）

また、医療事務スタッフも「受付」「電話対応」「予約管理」「保護者対応」など多様な業務をこなすため、教育体制とマニュアル整備が重要です。

◆ 定着率を高めるための職場づくり

医療業界は人材流動が激しいため、開業時から長く働きたくなる環境をつくることがポイントです。

・労働時間や休憩時間の明確化
・子育て中スタッフへの柔軟なシフト対応
・院内コミュニケーションの促進
・院長のビジョン共有（理念・運営方針）

６．集患対策とマーケティング戦略

◆ 小児科ならではの「集患戦略」がある

小児科は、「子ども本人」だけでなく「親御さんの信頼」を獲得しなければ来院につながらない、という特殊な構造を持っています。つまり、患者層のターゲットが「親子」セットであることが前提となるため、集患のための導線設計やメッセージの伝え方も通常の診療科と異なります。

重要なのは以下の2点です。

保護者が安心して子どもを連れて行けるクリニックであると感じること
診療内容や方針がわかりやすく伝わること

◆ ホームページは「安心感」と「使いやすさ」を重視

現代の患者はクリニックを選ぶ際、必ずといっていいほどホームページを確認します。とくに小児科の場合、親が「この先生に任せて大丈夫か」「施設は清潔か」「アクセスしやすいか」といった視点でチェックします。

よって、以下のような要素を丁寧に掲載することが重要です。

院長の専門分野や経歴、診療への思い（“人柄”が伝わる文章）
予防接種・乳児健診・発達相談など診療内容を丁寧に分類
診療時間や予約方法のわかりやすい案内
施設内の写真（待合室・キッズスペース・診察室）
アクセス方法や駐車場の有無の明記
FAQ（よくある質問）コーナーの設置

また、スマートフォンからの閲覧が主流なため、レスポンシブ対応やページの軽さにも配慮が必要です。

◆ Googleビジネスプロフィール（旧Googleマイビジネス）対策も必須

地域の保護者が「近くの小児科」と検索する際に表示されるのが、Googleの地図検索結果（ローカル検索）です。

ここで上位に表示されるには、Googleビジネスプロフィールの充実と管理が不可欠です。

写真（外観・内観・スタッフ）を定期的に更新
診療案内や診療時間の正確な入力
患者の口コミ（レビュー）を意識的に集める
患者からの質問への丁寧な返信

とくに口コミは、来院を迷う保護者にとって大きな判断材料になります。

「先生が親身だった」「待合室が清潔だった」「説明が丁寧」など、信頼を感じる内容が自然と集まる仕組みを整えることがポイントです。

◆ SNSや地域広報を活用した認知拡大

FacebookやInstagramなどのSNSは、クリニックの雰囲気を伝えたり、イベント・休診日案内などのお知らせにも有効です。

また、以下のような地域との接点づくりも、開業初期の集患に大きく貢献します。

地元の子育て支援施設にチラシ設置
保育園・幼稚園への案内配布（行政との連携に注意）
地域紙やフリーペーパーへの掲載
オープン前の内覧会や健康相談会の開催

このように、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド集患戦略が成功のカギとなります。

７．開業までのスケジュールと手続き一覧

◆ 開業準備には「最低でも9～12か月」の期間を見込む

小児科に限らず、クリニック開業は準備項目が非常に多く、思っている以上に時間がかかります。

特に「立地選定」「資金調達」「設計・施工」など、医療行為とは別の専門領域が多く含まれるため、全体スケジュールを把握しておくことが重要です。

◆ 小児科開業までの標準スケジュール（例）

時期主なタスク

約12ヶ月前	コンセプト・開業地の選定、診療圏調査開始
約10ヶ月前	事業計画作成、資金調達、物件契約
約8ヶ月前	内装設計・施工業者選定、医療機器選定
約6ヶ月前	スタッフ採用・教育、広告戦略立案
約4ヶ月前	ホームページ制作、内覧会準備、行政手続き開始
約1ヶ月前	医師会・保健所への届け出、機器設置、試運転
開業当日	開業