Medisea(メディシー)|成功確率を最大化するクリニック開業

コラム

Column

握手するドクターと男性の写真

今のうちに考える、クリニック譲渡の方法と事前準備

1.なぜ今、クリニック譲渡を考えるのか?

少子高齢化と医師の高齢化が進む中、「クリニックの将来をどうするか」という課題は多くの医師が直面する問題となっています。とくに個人開業医にとって、院長のリタイア後に診療をどう継続するかは、患者・スタッフ・地域医療すべてに影響を及ぼす重要な決断です。

高齢化による閉院リスクの増加

日本医師会の調査によると、60歳以上の開業医は全体の約半数にのぼります。こうした状況の中、「自分の代で終わってしまう」「患者に迷惑をかけたくない」という思いから、譲渡を前向きに検討する医師が増えています。

譲渡は「後ろ向き」ではなく「戦略的選択」

これまで、クリニックを他者に譲ることは「経営の失敗」と捉えられることもありました。しかし今では、「譲渡」は経営者としての合理的判断であり、将来を見据えた戦略的な選択肢のひとつです。

現役のうちに準備し、円滑な引き継ぎを図ることで、患者やスタッフへの影響を最小限に抑えながら、自身のライフプランやリタイア後の生活設計にも余裕を持つことができます。

2.クリニック譲渡の主な手法とは

ミーティング中の風景

クリニック譲渡には複数の方法があり、譲渡先や目的に応じて最適な手段を選ぶ必要があります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあるため、事前に理解しておくことが重要です。

【M&A方式】第三者への譲渡

M&A(事業譲渡または株式譲渡)による方法は、クリニックを医療法人・個人開業医・法人グループなど、まったくの第三者に譲る形です。最近ではM&A仲介会社が増え、買い手候補とのマッチングの選択肢も広がっています。

M&Aのメリット

適正な評価額で売却できる可能性
親族に後継者がいない場合でも対応可
経営ノウハウを持つ事業者に継承されることも多い

M&Aのデメリット

相手との相性や条件交渉が難航することもある
・スタッフや患者に不安を与えやすい

【親族承継】子や親族への譲渡

子どもや親族が医師資格を持っている場合、診療を引き継ぐ形での承継も選択肢です。信頼関係が築かれているためスムーズな譲渡が期待できます。

親族承継のメリット

価値観が近く、意思疎通がしやすい
長期的視点での運営が可能

親族承継のデメリット

・親族が医師でない、または別の診療科希望で承継困難なケースもある
家族間でのトラブルに発展するリスク

【勤務医承継】内部人材への譲渡

クリニック内で長年勤めた勤務医が承継する方法です。スタッフや患者からの信頼も厚く、比較的スムーズな引き継ぎが可能です。

勤務医承継のメリット

すでに院内に馴染んでいるため、業務が継続しやすい
・スタッフ離職などの混乱を防ぎやすい

勤務医承継のデメリット

・勤務医に資金力や経営知識がないと進めづらい
法人格の変更や事業承継契約の煩雑さがある

【閉院という選択肢】との比較

譲渡ではなく、一定期間で閉院する選択もありますが、設備の撤去費用、スタッフの退職手続き、患者への説明など、コストと時間的負担は大きく、患者の継続的な医療提供という点からも地域医療への影響は避けられません。譲渡はこれらの負担を軽減する選択肢としても有効です。

3.譲渡の準備でやるべきこと|成功に向けたステップ

クリニック譲渡は一朝一夕でできるものではなく、事前準備が成否を左右します。この章では譲渡前に整理すべき要素を解説します。

財務・経営状況の整理

譲渡希望者の多くは、過去の収支実績・現在の売上・経費構成・借入残高などをもとに譲渡価格の交渉を進めます。月次試算表や決算書を整備し、利益体質であることが可視化できる資料を準備することが重要です。

また、法人格(個人or医療法人)によって譲渡方法も異なるため、専門家と相談しながら必要な経営整理を進めておくことが望ましいでしょう。

診療実績・患者数の可視化

診療内容(内科、整形外科など)や1日あたりの平均患者数、主な患者層(高齢者・ファミリー層)など、定量・定性的なデータも重要です。買い手にとっては「安定的に患者が来るか」「地域に根付いているか」が判断材料となるため、患者層や診療内容の傾向が明示できると交渉が進みやすくなります。

スタッフの雇用状況・契約関係の整理

スタッフの勤務年数・雇用契約書・就業規則の有無なども、引き継ぎのポイントです。譲受側は、「スタッフが残ってくれるか」「労働条件に問題はないか」といった点を重視するポイントです。雇用契約書や業務内容を整理し、不明点をなくしておく必要があります。

また、不動産契約(賃貸借契約や土地の名義)・医療機器のリース契約・外注業務契約(清掃・IT)などの情報も一覧化しておくとスムーズです。

4.譲渡のタイミングをどう判断するか

クリニックの譲渡は、早ければ早いほど選択肢が広がり、計画的に準備できます。しかし「いつ動き出すべきか」は医師にとって判断が難しいポイントでもあります。適切なタイミングで動けるよう、判断基準を押さえておきましょう。

収益が安定しているうちに動く

譲渡において、クリニックの「収益性」は大きな判断材料となります。譲渡希望者が増えると価格交渉にも有利ですが、収益が低下してからでは評価額が下がり、買い手がつかないこともあるのです。
例えば患者数が安定し、利益が出ている時期に準備を始めることで、希望条件での譲渡の可能性が高まります。

「もう少し続けてから…」と判断を先延ばしにすると、体力・意欲・収益の低下とともに選択肢が限られてしまうため、現役で活躍しているうちに方向性を考えておくことが重要です。

患者・スタッフへの影響を最小限に抑える

突然の閉院や後継者未定の譲渡は、患者やスタッフに大きな不安を与えます。円滑な引き継ぎには、数ヶ月〜1年程度の準備期間が理想的です。

たとえば後継者を紹介し、引き継ぎ診療を一定期間設けることで、患者の不安を軽減できます。またスタッフへの説明や雇用条件の整理も、十分な時間をかけて進めることで混乱を避けることができます。

5.譲渡の進め方と流れ

ステップアップしていくイメージ図

譲渡の成功には、進め方を把握し手順良く対応していくことが不可欠です。

ステップ1:意向の明確化と専門家への相談

まず、自分のライフプランを整理し、「いつまでに譲渡したいか」「どういう条件なら譲渡できるか」といった方向性・希望を明確にします。そのうえで、医療M&Aや事業承継に精通した専門家へ早期に相談することで、全体の流れや注意点を把握できます。

ステップ2:クリニックの評価・条件交渉

次に、クリニックの資産状況や収益をもとに譲渡価格や条件(設備・不動産の扱い、スタッフの雇用など)を評価します。買い手候補とのマッチングが進めば、条件交渉・基本合意へと移行します。

この段階では、事業価値を左右する要素(患者数、診療内容、地域性など)を明示する「診療圏調査」や「経営分析」も非常に有効です。

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Medisea(メディシー)では、無料で診療圏調査を行っております。
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ステップ3:契約・引き継ぎ・アフターフォロー

譲渡条件がまとまれば、正式な契約締結・事業引き継ぎへと進みます。法人譲渡であれば株式譲渡契約、個人事業であれば資産譲渡契約などが必要です。

その後は、業務の引き継ぎ期間を確保し、患者・スタッフ・関係者への周知や対応を丁寧に行います。また引き継ぎ後の一定期間は、旧院長としてアフターフォローを行うケースもあります。

6.クリニック譲渡で起こりうるトラブルと回避策

クリニック譲渡では、進め方を誤るとトラブルに発展するリスクがあります。ここでは、よくあるトラブル事例とその防止策を紹介します。

よくある失敗例とリスク

価格交渉がまとまらない

譲渡価格が高すぎたり根拠が不透明だったりすると、買い手との交渉が難航します。売上・利益・設備の状態などをもとに、適切な評価を行いましょう。

スタッフの離職や不信感

スタッフが譲渡の事実を「寝耳に水」で知ると、不信感や離職リスクが高まります。譲渡方針が固まった時点で丁寧に説明し、安心して働き続けてもらえる体制を作ることが大切です。

患者の不安・離脱

譲渡後に診療内容や雰囲気が大きく変わると、患者が離れてしまう可能性があります。後継医師との連携や、診療方針の一貫性を重視する姿勢が求められます。

トラブル回避のポイント

  • 譲渡開始前に「情報整理シート」や「スケジュール表」を作成し、計画的に進める
  • スタッフ・患者・取引先への情報共有を適切なタイミングで行う
  • 第三者の専門家(医療経営士、会計士、弁護士など)と連携し、書類作成や交渉の負担を軽減する

 

7.クリニック譲渡で得られるメリットとは?

クリニック譲渡は、「辞めざるを得ないから仕方なく選ぶ」という後ろ向きなものではありません。経営者・医師として、そして地域医療の担い手としての責任を果たす、前向きな選択肢です

医師本人にとってのメリット

リタイア後の生活設計ができる

クリニックを計画的に譲渡することで、閉院に伴う清算リスクや精神的負担から解放され、セカンドライフに安心感が生まれます。

譲渡益の確保が可能

クリニックを売却することで、設備や診療権の価値を「資産」として回収できる場合があります。年金や退職金に加えて、老後の資金確保にも寄与します。

医療活動の継続も選べる

譲渡後も一定期間、非常勤医師などとして診療に関わることで、無理なく医療現場とつながり続けることも可能です。

買い手にとってのメリット

初期費用を抑えて開業できる

既存の物件や医療機器、人材がそろっているため、新規開業と比べて初期投資を抑えやすくなります。

患者がすでにいる状態からスタート

診療圏や患者層が確立しているため、開業初期の集患リスクを軽減できます。

地域に根ざした医療が引き継げる

既存の地域医療ネットワーク(紹介元病院、訪問看護ステーション等)もそのまま活用できるケースが多く、事業基盤として有利です。

地域社会にとってのメリット

地域に根ざしたクリニックが閉院することは、住民の医療アクセスに大きな影響を及ぼします。譲渡により診療が継続されることで、地域医療の安定と継続に寄与することができます。

8.まとめ|将来を見据えて、今からできる一歩を踏み出そう

窓の外の風景をみるドクターの写真

クリニックの譲渡は、人生の大きな節目となる意思決定です。「まだ先のこと」と思いがちですが、準備不足で後悔するケースも少なくありません。

今のうちから経営の見直しや情報整理を始めておくことで、いざという時に慌てず、自分にとっても患者にとっても納得できる選択ができるはずです。

そして、自力で進めるのではなく、医療分野に特化した信頼できる専門家のサポートを受けることが、円滑な譲渡・継承への近道です。

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