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コラム

Column

後継者不足とどう向き合う?|地域医療を支えるクリニック承継

1.クリニック承継と後継者不足の現状

考え込むドクターの写真

地域医療を支えるクリニックの重要性

日本の地域医療において、クリニックは一次医療の入り口として不可欠な役割を担っています。
もう少し具体的にお話しすると、患者は診療科にかかる際、まず地域の診療所・クリニックを受診し、必要に応じて総合病院などへ紹介されるという流れが基本です。そういった意味で、診療所・クリニックは気軽に相談できる一時医療とされております。
高齢化が進む地域では慢性疾患や生活習慣病の継続的管理、在宅医療などを通じて地域に根差した治療をし、患者の生活を支えています
しかし、その重要な役割を担うクリニックが、院長の高齢化や後継者不足を理由に閉院を余儀なくされるケースが増えています。閉院により遠方の医療機関まで通院しなければならない人々も増え、医療アクセスが低下する懸念があります。

全国で進む医師の高齢化と後継者不在問題

厚生労働省や医師会の統計によると、開業医の平均年齢は年々上昇し、60歳以上が多数を占める状況です。都市部だけでなく地方や過疎地域でも高齢化は進行しており、後継者候補が見つからないまま引退を迎えれば、廃業となってしまいます。
医療は単なる設備や不動産だけでなく、患者との信頼関係や地域に根付いた経営基盤が重要であり、突然の閉院は地域社会に大きな影響を及ぼします。

後継者不足が地域医療に与える影響

後継者不足によるクリニック閉院は、単なる医療機関の減少にとどまらず、以下のような影響を及ぼします。

  • 患者の通院負担増:通院距離の延伸や予約困難化
  • 医療の質低下:慢性疾患の継続的な管理が困難になる
  • 地域医療連携の崩壊:病院とクリニックの役割分担が機能不全に陥る

こうした背景から、後継者不足への対応は地域医療を守るための最優先課題といえます。

 

2.なぜクリニックの後継者不足が深刻化しているのか

人口減少・過疎化と医師の偏在

地方では人口減少が進み、患者数が減少しています。さらに医師の都市部集中が進み、若手医師が地方に定着しにくい状況です。人口規模が小さい地域ほど後継者探しが難航し、承継が進まない傾向があります。

開業医志望の若手医師減少

医療機器の高額化や診療報酬の抑制、経営リスクの増加などを背景に、若手医師が開業よりも病院勤務を選ぶ傾向が強まっています。さらに、医療以外にも経営・労務・法務など幅広い知識が求められるため、独立開業のハードルが高いと感じる医師が増えています。

経営・継承のハードルと承継準備不足

多くのクリニックでは、承継計画の策定が後回しになりがちです。「引退が近づいてから承継を検討し始める」というケースも少なくありません。実際には、承継には数年単位の準備期間が必要であり、財務状況や契約関係の整理、後継者候補との調整など、多方面の作業が発生します。

 

3.後継者不足を解決するためのクリニック承継の選択肢

親族内承継:家族による継承のメリット・デメリット

親族(子どもや親戚の医師)に承継する方法は、患者やスタッフにとって安心感のある形態です。地域に根付いた経営を維持できる一方、親族内に医師がいない場合は実現が難しく、また世代間の経営方針の違いが課題になることもあります。

院内承継:勤務医やスタッフによる承継

長年勤務してきた医師やスタッフが院長を引き継ぐ方法です。診療スタイルの維持がしやすく、患者離れを防ぎやすいのが特徴です。ただし、勤務医に開業意欲や資金力がなければ実現が困難です。

第三者承継(M&A):地域外・異業種からの引き継ぎ

親族や院内に適任者がいない場合、外部の医師や医療法人に譲渡する第三者承継(M&A)が有効です。既存設備や患者基盤を活かせるため、ゼロからの開業よりもスムーズに診療を開始できますが、譲渡条件の交渉や契約の複雑さが課題です。

医療法人化による承継のスムーズ化

個人開業医では事業承継に不動産や医療機器、雇用契約など複数の契約が絡みます。医療法人化しておくと、法人ごと承継できるため手続きや契約整理が比較的容易になり、スムーズな承継が可能になります。

 

4.承継を成功させるための準備とポイント

ポイントの図

承継計画は早めに策定する

クリニック承継の成否を分けるのは、準備の早さです。引退の直前になってから後継者を探すのでは、候補者の確保や契約条件の調整が難航します。理想的には5年以上前から承継計画を検討し、候補者探し・経営改善・財務整理を進めることが望まれます。早期の計画は、候補者にとっても安心材料となり、承継後の運営にも好影響を与えます。

診療圏・患者基盤を分析する

後継者が承継後の経営を安定させるためには、クリニックがどの程度の患者数を抱えているのか、診療圏の人口動態はどうか、といったデータが重要です。診療圏分析によって、競合状況や将来の患者数予測を把握し、承継後の事業計画に反映させます。

診療圏調査にご興味のある方へ

Medisea(メディシー)では、無料で診療圏調査を行っております。
エリアごとの人口動態や年齢分布、競合分布、医療ニーズなど詳細分析が可能です。
どのエリアなら適切か、検討中のエリアが問題ないか?など、
ぜひお気軽にお問合せください。

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財務状況を整理し、経営を改善する

承継前に財務状況を明確化しておくことは必須です。損益計算書・貸借対照表を整理し、不良債権や不要な負債の処理を進めることで、後継者が安心して承継できます。

医療機器・施設の整備

古くなった医療機器や施設は、後継者の判断に大きく影響します。承継直前に大規模な投資を行う必要はありませんが、最低限の修繕や必要機器の入れ替えは検討すべきです。最新の医療機器やITシステムが導入されていると、後継者にとって魅力的な承継案件になります。

 

5.後継者探しの具体的な方法

医師会・医療団体のネットワークを活用する

地域の医師会や医療団体は、後継者候補とのマッチングをサポートしてくれることがあります。会員同士の紹介や情報交換を通じて、信頼性の高い候補者を見つけられる場合があります。

専門仲介会社・M&Aプラットフォームを利用する

医療業界に特化した事業承継の仲介会社やM&Aマッチングサイトは、広く後継者を募るのに有効です。候補者の情報収集から契約交渉までサポートしてくれるため、専門知識が不足している場合や、承継における不安がある方は専門家の支援を利用するとよいです。

学会や研修会での人脈づくり

専門学会や医療系の研修会は、医師同士の交流の場でもあります。将来の開業を検討している若手医師と接点を持つことで、信頼関係を築きながら後継者候補を探すことができます。

医療系求人メディア・SNSの活用

近年では、医療系の求人サイトやSNSを通じた後継者募集も増えています。特にSNSは個人の人柄や診療方針を発信できるため、理念に共感する候補者を引き寄せやすい手段です。ただし、情報公開の範囲や内容には十分配慮する必要があります。

 

6.承継時に注意すべき法律・契約・税務のポイント

医療法・診療所開設許可の承継ルール

クリニックを承継する際、医療法に基づく開設許可の手続きが必要です。特に個人開業医の場合、承継する医師が新たに開設者となるため、保健所への届出や許可申請が必須です。法人として承継する場合も、理事長や管理者の変更手続きが求められます。これらの法的要件を怠ると診療を継続できなくなる可能性があるため、事前にスケジュールを組んで準備することが重要です。

事業譲渡契約・賃貸契約の引き継ぎ

クリニックの不動産やテナント契約、医療機器リース契約などは、承継時に契約の名義変更や再契約が必要になる場合があります。特に賃貸物件の場合、貸主の承諾が必要であり、条件によっては賃料や契約内容が変更されることもあります。また、事業譲渡契約においては、譲渡対象の範囲(医療機器、患者カルテ、スタッフ雇用契約など)を明確に定めておく必要があります。

税務対策

クリニック承継では、譲渡益課税などの税金が発生することがあります。税理士など専門家と連携して事前に最適なスキームを検討しましょう。

 

7.承継が地域医療と経営に与えるメリット

患者の通院継続と地域医療の維持

クリニック承継最大のメリットは、患者が安心して通院を続けられることです。承継によって診療の中断を防ぎ、慢性疾患の継続治療や定期的な健康管理が途切れることを防止できます。これは特に高齢者や通院困難な患者にとって大きな安心材料です。

医療従事者の雇用継続

承継によってスタッフの雇用が守られることも重要なメリットです。閉院すれば医療事務や看護師などの雇用が失われますが、承継により既存スタッフが継続勤務でき、患者との信頼関係やクリニックの運営ノウハウが引き継がれます。

新院長による診療内容の拡充と経営強化

承継後、新しい院長がこれまで提供していなかった診療科目や最新の医療サービスを導入することで、診療の幅が広がり、患者層の拡大や収益の向上が期待できます。地域のニーズに合わせた経営戦略を打ち出すことで、より強固な経営基盤を築くことが可能です。

 

8.メディシーによるサポート

コンサルタントと医師の握手

診療圏調査の提案

メディシーでは、地域の人口動態や競合状況を分析する診療圏調査を行っています。これにより、後継者候補にとっての事業性や将来性を客観的に評価できます。
ゼロからの開業支援も行っておりますので、開業・承継で迷われているドクターもお気軽にお問合せください。

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Medisea(メディシー)では、無料で診療圏調査を行っております。
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まとめ|後継者不足時代の承継戦略

全国で進む医師の高齢化や人口減少により、クリニックの後継者不足は深刻化しています。承継は単なる経営の引き継ぎではなく、地域医療を未来につなぐための重要なプロセスです。
親族内承継、院内承継、第三者承継といった複数の選択肢を理解し、早期に計画を立てることが成功の鍵です。診療圏分析財務整理後継者探しは時間を要するため、少なくとも5年以上前からの準備が望まれます。
承継を円滑に進めるためには、法律や契約、税務の専門知識も必要です。信頼できるパートナーと連携し、地域の患者とスタッフの生活を守る承継を実現しましょう。