
再来率・キャンセル率…開業医が見るべきクリニックKPIとは
1. クリニック経営におけるKPIとは?
KPIの基本定義と重要性
KPIとは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」の略で、経営目標に対する達成度を数値で把握するための指標を指します。
クリニック経営においては、「患者数」「売上」だけを見るのではなく、結果に至る“過程”を分解して可視化することがKPIの本質です。
たとえば売上が伸び悩んでいる場合でも、
・新患数が少ないのか
・再来率が低いのか
・キャンセル率が高いのか
によって、打つべき対策はまったく異なります。
KPIを設定することで、感覚や経験則ではなく、データに基づいた経営判断が可能になります。
特に開業初期のクリニックでは、患者数や収益が不安定になりがちです。この時期にKPIを定点観測できているかどうかが、その後の経営の安定性を大きく左右します。
なぜ開業医がKPIを見る必要があるのか?
勤務医時代と異なり、開業医は「医療の質」だけでなく「経営の質」も同時に求められます。実は多くの先生が、経営判断を感覚的指標に頼りがちです。
「最近、患者さんが減った気がする」「忙しい割に利益が残らない…なぜだろう」「キャンセルが多い印象がある」これらはすべて重要な兆候ですが、数値化されていなければ正確な改善にはつながりません。
KPIを見るという行為は、クリニック経営を「属人的」なものから「再現性のある仕組み」に変える第一歩です。
また、KPIは院長一人のための指標ではありません。
スタッフと共通言語として共有することで、「なぜこの改善が必要なのか」「何を目指して行動すべきか」が明確になり、チーム全体の動きが揃いますし、日々の業務への取り組み方にも良い影響がでます。
KGI、KSFとの違い
- KGI(Key Goal Indicator):「重要目標達成指標」最終的に達成したい目標やゴールの指標(数値)
- KSF(Key Success Factor):「重要成功要因」KGIを達成するために重要な要因(条件)
- KPI(Key Performance Indicator):「重要業績評価指標」KGIを達成するために、必要なプロセスの到達度合いを計測するための指標
まずはKGIを設定し、どのようにしたらKGIを達成できるか?という視点で、KSF・KPIを決めていきましょう。
2. 具体的にどういったKPIを設定するか

再来率…リピートにつながる最大の鍵
KPIに再来率を設定する…つまり、初診患者がどれだけ継続して来院しているかを示す指標を設定するということです。再来率を把握することはとても大切です。広告や紹介で新患獲得に力をいれることも大事ですが、再来につながらなければ経営は安定しません。
再来率が低い場合、
・診療内容が患者ニーズと合っていない
・待ち時間や導線にストレスがある
・次回来院の動機づけが弱い
・患者対応やオペレーションに改善点がある
など、課題が潜んでいると言えます。
再来率は、医療の質・接遇・オペレーションすべての結果が反映されるKPIです。
キャンセル率…無駄を減らし収益を守る
キャンセル率は、予約が実際の診療につながらなかった割合を示します。
一見すると小さな問題に見えますが、
・診療枠のロス
・スタッフ稼働の無駄
・機会損失
といった形で、確実に経営を圧迫します。
特に予約制を採用しているクリニックでは、キャンセル率の高さは収益構造そのものの不安定さにつながります。
重要なのは、なぜキャンセルが起きているのかを構造的に把握することです。
診療単価・患者数・稼働率…他の重要指標
「再来率」「キャンセル率」とあわせて把握しておきたいのが、このKPIです。
- 診療単価:1人あたりの平均売上
- 患者数:新患・再来それぞれの推移
- 稼働率:予約枠がどれだけ有効活用されているか
これらは単独で見るのではなく、相互の関係性が重要です。
たとえば「患者数は多いが単価が低い」「稼働率は高いが利益が残らない」といった状態は、KPIを並べて初めて可視化されます。
3. 再来率とは?計算方法と改善のコツ

再来率の計算式と目標値
再来率とは、初診患者のうち、一定期間内に再度来院した患者の割合を示す指標です。一般的な計算式は以下のとおりです。
- 再来率(%)= 再来患者数 ÷ 初診患者数 × 100
「いつまでを再来と定義するか」は、クリニックごとに定義し明確にしておく必要があります。
・初診から30日以内
・初診から3か月以内
・治療計画に基づく次回予約まで
など、診療科や診療内容によって適切な期間は異なります。
再来率を見る際は、自院の診療特性に合った期間設定を行うことが前提となります。
目標値についても一律の正解はありませんが、
「月ごとの再来率推移を安定して把握できているか」
「改善施策後に数値がどう変化したか」
といった変化を見る視点が重要です。
再来率が上がる仕組みづくり
再来率は、単なる接遇改善だけで上がるものではありません。重要なのは、患者が「次も来る理由」を自然に持てる設計です。
- 診療中に「次に何をするのか」が明確に伝わっている
- 次回来院の目的や時期が患者自身に理解されている
- 受付・会計時に再来の流れがスムーズに案内されている
「診療が丁寧・親切」のみでなく、「次につながる説明」もポイントになってきます。再来率改善は、診察室だけで完結するものではなく、院内全体のオペレーション設計が関係します。
患者満足度と再来率の関係
再来率は、患者満足度と強く結びついていますが、「満足=再来」ではない点に、注意が必要です。
患者が満足していても、「次回来院の必要性が伝わっていない」「忙しくて予約が後回しになる」「予約方法が分かりにくい、面倒」といった理由で再来につながらないこともあります。
つまり再来率は、患者満足度を高めるだけでなく、医療の質 × 分かりやすさ × 行動のしやすさが揃って初めて向上するKPIだと言えます。
4. キャンセル率を下げる具体策

キャンセル率の計算と把握のポイント
キャンセル率は、以下の式で算出できます。
- キャンセル率(%)= キャンセル件数 ÷ 予約件数 × 100
重要なのは、「当日キャンセル」「無断キャンセル」「事前キャンセル」を分けて集計することです。これにより、問題の性質が明確になります。また、単に数値を出すだけでなく、キャンセルの内訳を見ることが改善の第一歩です。
キャンセル予防の予約・連絡体制
たとえば、当日・無断キャンセルが多い場合は、リマインドや動機づけ不足していることが原因となっているかもしれません。
- 予約確認のリマインド
- 来院目的の再提示
- 日時変更がしやすい導線
ポイントは、患者にとっての心理的ハードルを下げることです。連絡しづらい仕組みは、結果的にキャンセル率を押し上げてしまいまう可能性がありますので、注意が必要です。
キャンセル時の患者対応フロー
キャンセルは完全にゼロにすることはできません。「キャンセルが発生した後の対応」に抜けがないか確認しましょう。
- 次回予約の提案ができているか
- キャンセル理由を簡単に記録できているか
- 同じ患者で繰り返していないか
このような要点を整理することで、キャンセルを「単なる損失」ではなく、改善につながるデータとして活用できます。キャンセル率は、管理できているかどうかで経営への影響が大きく変わるKPIです。
5. KPIを活かした改善サイクルの構築方法

目標設定 → 実績 → 改善の流れ
KPIは「設定して終わり」では意味がありません。
- KPIを決める
- 実績を定期的に確認する
- 差分から課題を特定する
- 改善策を実行する
- 再度KPIを確認する
このように、改善サイクルできるように日々取り組む必要があります。
たとえば再来率が想定より低い場合でも、「どの曜日・どの時間帯・どの診療内容で落ちているのか」まで分解することで、具体的改善策が出てくるでしょう。
データ収集の仕組みづくり
改善サイクルを回すうえで、「データが揃わない」という問題から、なかなか進まないことがあります。完璧なデータを目指さないことも、ポイントとなってきます。
“同じ条件で継続して取得できるデータ”を“月次で確認”することができれば、経営判断には十分活用できます。基本的なことですが、「入力が煩雑で続かない」「担当者によって集計方法が違う」といった状態にならないように気を付けながら、データ収集しましょう。
6. デジタルツール活用で、KPIの見える化

電子カルテ・予約システムと連携する利点
KPI管理を効率化するうえで、電子カルテや予約システムなどのツール活用は欠かせません。来院履歴、予約・キャンセル情報、診療内容といったKPIの元となるデータが集約されています。手作業で集計するのではなく、日常業務の延長で数字が蓄積される環境を作ることで、KPI管理のハードルは大きく下がります。
デジタルツールを選ぶポイント
クリニックでデジタルツールを選ぶ際は、「見たい指標がすぐに確認できるか」「直感的で見やすいか」などに注意するとよいでしょう。数字が見えるようになると、KPIを定期的に確認し改善を重ねることができますし、「自分たちの行動が結果にどう影響しているか」をスタッフ自身が理解できるようになります。
KPIは、単なる管理指標ではなく、チームの成果を可視化するツールでもあります。
まとめ
クリニック経営において、KPIは特別なものではありません。
再来率やキャンセル率といった身近な指標を、正しく見て、正しく活かすことが重要です。
数字は現状を映す鏡であり、改善のヒントでもあります。感覚に頼らず、KPIを軸に経営を見直すことで、安定したクリニック運営と患者満足の両立が可能になります。
開業支援ならメディシーへ|無料相談はこちらから

メディシーでは、物件探しから開業後のフォローまでを一貫して支援する「ワンストップ型」のクリニック開業支援を提供しています。
これまで多数のクリニック開業を支援してきた実績をもとに、個別状況に応じた最適なアドバイスを行っています。初期構想から開業後の運営まで、すべてのフェーズで伴走支援が可能です。
「どこに相談すればいいか分からない」「本業が忙しくて準備が進まない」「立地選定に自信がない」「機器の選び方がわからない」「資金計画が不安」…
一人で悩まないことも重要です。信頼できるパートナーとともに計画を立てることで、開業成功率は格段に高まります。
診療圏調査と立地選定
開業地の選定は、将来にわたって患者数を左右する重要なポイントです。 将来的な集患を見据えたエリア調査を実施し、競合状況や人口動態を分析。最適な立地選びをサポートします。
資金調達・事業計画支援
収支シミュレーションを含む事業計画の策定から、銀行融資や助成金の相談対応まで、安心してスタートできる体制を整えます。
建築相談
クリニックの理念やコンセプトに基づいた、内装プラン・レイアウトの提案ができる、医療機関を中心に手掛けている業者をご紹介いたします。
専門業者であるので、患者様やスタッフの導線を考えたレイアウトになり、居心地のよい・仕事の効率のよい理想のクリニックができあがります。
広告
医療機関の広告は、医療法などの規制を受けており、内容についても保健所などから指導があります。しかし、クリニックの存在を地域の方々に認知していただかないと、集患に繋がらないので、開業時の広告は必須です。
広告宣伝の方法もパンフレット・チラシ・駅看板や電柱広告など多岐に渡りますが、その中でもホームページは、医院側から情報発信できる有効な広告媒体なので、ホームページの開設はおすすめしております。
各種手続き・スタッフ採用・開業後のサポートも万全
保健所や医師会への開設申請、就業規則や社会保険手続き、スタッフ採用の支援に加え、開業後の増患対策や運営改善まで丁寧にフォローします。
あなたのビジョンと熱意を、現実の成功へと変えるために。
未来の理想的なクリニックづくりを、メディシーが全力でサポートいたします。













