
クリニックのSNS運用|開業医が患者に選ばれるための戦略とポイント
デジタル社会の進展により、情報収集の手段がテレビやチラシから、SNSや検索エンジンへと大きく移行しています。こうした変化の中、クリニック運営においても「SNS運用」が重要なマーケティング手段の一つとなりました。
開業後に「患者が思うように集まらない」「ホームページは作ったけど反応がない」といった悩みを持つクリニックにとって、SNSは費用対効果の高い集患ツールです。
しかし一方で、「本当にSNSに取り組む必要があるのか」「どのSNSが自院に合っているのか」「運用の負担が増えすぎないか」といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、SNS運用のメリット・デメリットから、おすすめのSNS選定、集患につながる活用法、広告運用の判断軸、そして医療広告ガイドラインへの対応まで、クリニックがSNSを運用する上で押さえるべきポイントを徹底解説します。
1.なぜ今、クリニックにSNS運用が必要なのか?
かつての集患方法といえば、駅前看板やポスティング、地域情報誌への掲載などが主流でした。しかし、2020年以降のコロナ禍を契機に、患者の情報収集行動は大きく変化しています。
SNSでの口コミや発信内容からクリニックを知り、ホームページやGoogleビジネスプロフィールを確認し、予約を取る――そんな流れが、特に20〜40代の患者層で一般的になってきています。
SNS運用が有効な3つの背景
●情報検索の主流が「SNS+Google」になった
若年層〜子育て世代では、SNSで得た情報をきっかけに検索をかける行動が日常化しています。
●患者は「人柄」や「雰囲気」でクリニックを選ぶようになった
医療技術だけでなく、「先生の雰囲気」「スタッフとの距離感」「清潔感」などをSNSを通じて確認し、判断材料としています。
●無料で始められる、継続的なPR手段
SNSアカウントの開設・運用自体は無料で、運用次第で月数千人規模のリーチも狙えます。広告予算が限られている開業直後のフェーズには最適です。
2.クリニックがSNSを運用する6つのメリット
1. 無料で始められるコストパフォーマンスの高さ
開業初期は広告費の確保が難しい場合も多い中、SNSは無料で運用でき、PRやブランディングが可能です。
2. 患者に安心感を与える
クリニックの日常やスタッフ紹介を投稿することで、来院前から患者に安心感を与えられます。特に小児科や美容皮膚科では心理的ハードルの軽減に有効です。
3. 最新情報を即時発信できる
診療時間の変更や予防接種の案内など、タイムリーな情報発信が可能です。ホームページの更新よりもスピード感があります。
4. ブランディングに寄与する
「地域密着型」「女性のための医療」「土日も診療」など、自院の特性や方針を継続的に打ち出すことでブランドイメージを形成できます。
5. ホームページや予約への導線になる
プロフィール欄や投稿にURLを設置することで、自然な形でWebサイトや予約ページへのアクセスを促せます。
6. 採用活動にも活用可能
SNS経由で求職者が職場の雰囲気を知ることができ、ミスマッチのない採用につながることもあります。
3.クリニックがSNSを運用する際の3つのデメリットと対処法
デメリット1:運用にある程度の知識が必要
投稿の時間帯や内容、タグの活用、エンゲージメントの分析など、基礎的なマーケティング知識が求められます。
対策:最初は最低限のルールを決め、徐々に改善する形でOKです。
デメリット2:スタッフの負担が増える
投稿準備や写真撮影が日常業務に加わると、現場に負担がかかります。
対策:投稿の分担を決め、1週間単位でまとめて予約投稿するなどの工夫を。
デメリット3:炎上リスク
不適切な発言、個人情報の取り扱いミスなどで炎上するリスクもあります。
対策:投稿前のチェックルールを設け、個人情報は写り込まないよう配慮を。
4.クリニックにおすすめのSNSツールと特徴
クリニックがSNS運用を始める際にまず迷うのが、「どのSNSを使うべきか」です。ここでは代表的なSNSの特徴と、医療機関における活用のしやすさを比較します。
Instagram|ビジュアルで信頼を育てる
若年層〜子育て世代の利用が多く、写真や動画を中心にした投稿で院内の雰囲気や診療方針を直感的に伝えられます。
とくに美容皮膚科、小児科、産婦人科、整形外科では、「清潔感」「スタッフの親しみやすさ」などを訴求するのに適しています。
・メリット :視覚的な信頼性、情報の拡散力が高い
・デメリット:投稿頻度・デザインに工夫が必要
LINE公式アカウント|再来院につなげやすい
LINEは国内最大級のメッセージアプリであり、既存患者との継続的な関係構築に強みを持ちます。
診療時間変更、休診日のお知らせ、定期検診の案内などのプッシュ通知が可能で、再診率向上に貢献します。
・メリット :既存患者の囲い込み、配信の確実性
・デメリット:新患へのリーチ力は低め
X(旧Twitter)|拡散力が高くリアルタイム性も魅力
リアルタイム性の高いプラットフォームで、医療ニュースや啓発情報などの共有に向いています。
開業医・専門医の中には、Xを通じて「医師個人のブランド」を確立しているケースもあります。
・メリット :情報拡散力が高い、専門性を活かしやすい
・デメリット:投稿内容次第では炎上のリスクあり
Facebook|シニア層との接点に
30代以上のビジネスパーソン・地域コミュニティとの親和性が高く、地域密着型のクリニックに向いています。
自治体や地域イベントの情報発信にも活用しやすいのが特徴です。
・メリット :地域連携や説明性の高い投稿に向く
・デメリット:若年層の利用率は低め
5.SNS運用を成功させる実践ポイント6選
SNS運用はただアカウントを開設するだけでは効果は出ません。以下に、特に重要な6つの実践ポイントを紹介します。
1.目的を明確にする
集患が目的なのか、信頼形成・再診促進・採用活動が中心なのかで、運用方針が変わります。まずは運用のKPI(指標)を設定しましょう。
2.継続的に発信する仕組みをつくる
「忙しくて更新が止まる」が最もありがちな失敗例です。1週間分をまとめて予約投稿できるツール(例:Meta Business Suiteなど)の活用を検討しましょう。
3.QRコードを院内に設置する
来院した患者さんにフォローしてもらう導線として、受付や診察室にQRコードを設置するのが効果的です。
4.人柄や雰囲気が伝わる内容にする
治療内容の紹介だけでなく、「スタッフの日常」や「院内のこだわり」なども交えて投稿すると、ファン形成につながります。
5.ハッシュタグを活用する
「#地域名 #クリニック名 #診療科目」など、地域+診療内容のタグを組み合わせて投稿しましょう。発見される可能性が高まります。
6.運用ルールを設ける
写真の撮影可否、患者の写り込み禁止、内容のダブルチェックなど、情報発信ポリシーを明文化しておくことが、リスク対策にもなります。
6.マーケティングに欠かせないSNS広告の、メリットと注意点
無料投稿だけでなく、集患効果をさらに高める手段として「SNS広告」も検討されるようになっています。
SNS広告のメリット
- 地域や属性を細かく設定可能
「〇〇市在住の30代女性」など、ターゲットを絞って配信できるため、効率よく新患を獲得できます。 - 少額からテストできる
月1万円程度から始めることができ、反応を見ながら運用のチューニングが可能です。 - LINE・Instagramは広告表示率が高い
自然な形で広告が表示されやすいため、違和感なくクリックを誘導できます。
注意点
- 広告の内容が医療広告ガイドラインに抵触しないか慎重にチェックする必要があります。
- 広告運用の経験がない場合、費用対効果が出づらくなる可能性があるため、初期は外部の支援も検討しましょう。
7.医療広告ガイドラインとSNSの関係
SNS運用においても、「医療広告ガイドライン」の遵守は必須です。特に注意すべきポイントを解説します。
SNS投稿でもガイドラインの対象となる
「広告ではなく情報発信のつもりだった」投稿も、条件によっては広告とみなされ、規制対象になることがあります。
注意すべき表現例
- 「〇〇日まで無料!」「必ず治る!」などの誇大表現
- 「ビフォーアフター写真」や「患者の体験談(口コミ)」の掲載
- 未承認医薬品の記載
対策のポイント
- 事前にチェック体制を整える
- 投稿は「一般的な情報提供」として位置づけ、治療効果を断定しない表現を徹底する
- 必要に応じて外部のガイドライン対応専門家へ相談する
8.SNS運用を外注する際の注意点と判断基準
SNS運用のすべてを院内で行うのが難しい場合、外注(運用代行)も選択肢の一つです。
外注が向いているケース
- 院長やスタッフが忙しくて、運用の時間が取れない
- 一定レベルのブランディングを保ちたい
- 広告運用も含めて戦略的に進めたい
外注先を選ぶ際のポイント
- 医療業界のSNS運用実績があるか
- 医療広告ガイドラインへの対応経験があるか
- 戦略設計・投稿内容のチェック体制があるか
注意点
- 「安さ」だけで選ぶと、テンプレート的な運用になり、ブランディングが難しくなることも。
- 院内で「最低限の方向性・テーマ」は共有できるようにしておくと、より効果的です。
9.SNS運用でよくある失敗と成功事例
SNS運用においては「やってみたけれど効果が出なかった」「むしろマイナスの印象を与えてしまった」という失敗例も少なくありません。
一方で、的確に戦略を立て、運用を継続して成果を出しているクリニックも多数存在します。
よくある失敗例
1. 開設後に更新が止まってしまう
運用を始めたものの、「投稿する時間がない」「ネタが尽きた」「担当者が変わった」などの理由で更新が停止。
結果として、「やる気がない医院」「閉院したのかもしれない」といった誤解を与え、逆効果になるケースもあります。
対策:投稿の仕組み化(曜日別テーマ設定+予約投稿)と最低月2回の更新ルールを設定
2. すべてをスタッフ任せにしてしまう
「SNSは若手スタッフが得意だから」と任せきりにした結果、クリニックとして伝えたい軸がブレてしまう。
さらに、医療広告ガイドラインを知らずに患者のビフォーアフター写真を投稿し、指導を受けた例もあります。
対策:必ず運用方針・トーンを院長や広報責任者が定め、投稿内容は最終チェック体制を設ける
3. 「宣伝感」が強すぎてユーザーに敬遠される
診療内容やキャンペーンの告知ばかりでは、患者側にとって魅力が薄く、フォローにつながりません。
SNSでは一方的な広告よりも、「共感」や「信頼」を育てる投稿が重要です。
対策:診療の裏側、スタッフの人柄、地域との関わりなど“人間味のある発信”を意識する
4.内容が専門的すぎて難解
医療者目線で投稿した情報が、患者にとって難しすぎる・関心のない内容になってしまい、反応が得られないことがあります。
対策:患者視点で「知って得する」内容に噛み砕いて発信する(例:季節ごとの予防情報、よくあるQ&A)
成功事例
1.小児科 × Instagram
ある都市部の小児科では、Instagramを通じて院内の清潔感・親しみやすいスタッフの様子を定期的に投稿。
とくに「○○先生のお誕生日」や「ハロウィンの飾りつけ紹介」など、共感性のある投稿で母親層に支持を得てフォロワーが1000人以上に増加。
開業から半年でGoogle検索以外の流入としてSNS経由の来院が全体の15%を超える結果に。
2.美容皮膚科 × LINE公式アカウント
月1でLINEを活用し、季節に応じた施術メニューと限定クーポンを配信。
LINE登録者には事前予約が可能などのインセンティブも付与。
結果として、来院頻度が高まったリピーターが増え、既存患者のLTV(生涯価値)が大幅に向上。
3.整形外科 × X(旧Twitter)
ストレッチ法や腰痛予防など、日常生活に役立つ情報を毎日短文で投稿。
専門性と実用性の高さが評価され、同業者・地域住民からのリポストが増加。
検索でたまたま見た人がフォロー→受診という流れが生まれ、エリア外からの新患が増加。
4.婦人科 × Facebook
地域密着型の婦人科では、自治体との連携イベントや健康講座の案内をFacebookで発信。
投稿には毎回「コメントへの返信」を丁寧に行い、双方向コミュニケーションを重視。
地域内での評判向上に寄与し、「〇〇先生のところが一番話を聞いてくれる」と口コミで広がり、自然検索+SNS経由の患者が安定的に増加。
成功のカギは「情報の質×継続性×共感」
失敗と成功の違いを分けるのは、以下の3要素です。
- 情報の質: 医療的に正しく、患者目線で理解しやすいか
- 継続性: 投稿が滞らず、一定のペースで継続できているか
- 共感性: 一方的な告知ではなく、人や想いが伝わるか
SNSは“ファンづくりの場”と捉え、情報の「伝え方」に工夫を重ねることが成果への近道です。
10.SNS運用のスタートガイド|初期設定・投稿準備の進め方
SNS運用を始める前に、以下のステップを押さえて準備を整えましょう。
ステップ1:目的・対象者・投稿ジャンルを決める
「どの患者層に、どんな情報を、どのSNSで届けるか」を明確にする。
ステップ2:プロフィール・アイコンを整える
アイコンはロゴ or 院長の顔写真、プロフィールは診療内容+理念を簡潔に記載。
ステップ3:投稿テンプレートを用意
例:月曜日=休診案内、水曜日=スタッフ紹介、金曜日=豆知識…のようにルールを決めておくと継続しやすい。
ステップ4:予約投稿の仕組みを導入
Instagram・Facebook・Xは、無料ツールでの予約投稿が可能。事前に1週間分の投稿をまとめておくと効率的です。
まとめ|クリニック経営におけるSNS運用の立ち位置と可能性
SNSは、単なる「広報ツール」ではなく、クリニックの信頼構築・集患・再来院・採用にまで波及する戦略的手段です。
特に開業フェーズでは広告費をかけずに注目度を高めるチャンスでもあり、地域でのポジション確立にもつながります。
リスクを理解し、戦略的にSNSを活用することで、「選ばれるクリニック」への第一歩を踏み出せるのです。
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