医療機関のInstagram活用術|クリニックのSNS運用
1.はじめに なぜ今Instagramが医療機関に必要なのか
クリニックをはじめとする医療機関において、患者との接点や信頼構築の方法が大きく変化しています。その中心にあるのがSNS、特にInstagramの活用です。従来、医療機関の情報はホームページや口コミサイトが主な情報源でしたが、近年ではInstagramなどのSNSを通じて患者が「雰囲気」や「価値観」を感じ取り、来院を決めるケースが増えています。
Instagramは視覚的なコンテンツに強く、静的な情報以上に「親しみやすさ」「清潔感」「雰囲気」など、来院前に抱く不安を払拭する力があります。さらに、ストーリーズやリール機能を活用すれば、日々の診療風景や医師・スタッフの人柄も自然に伝えることが可能です。
本記事では、Instagramの基礎から実践的な活用術、広告規制への配慮、成功事例までを包括的に解説していきます。Instagramは“見る”だけでなく、“選ばれる理由”を作るツールでもあります。
2.Instagramの特性と医療機関に向いている理由
視覚的な安心感と共感の醸成
Instagramは「視覚的な安心感」を届けるのに非常に適したSNSです。写真や動画を通じて院内の雰囲気や設備の様子、スタッフの人柄を伝えることで、患者が安心して来院できる環境づくりに貢献します。たとえば、清潔感のある待合室や笑顔で対応するスタッフの写真は、「このクリニックは信頼できそう」という印象を与えます。
また、投稿に添えるキャプションで医師の思いや診療方針を丁寧に説明することで、専門性だけでなく「人間らしさ」や「共感」を得ることも可能です。無機質な広告とは違い、Instagramは信頼関係を構築するための“共感装置”とも言えるでしょう。
ストーリーズやリールで親近感を演出
24時間で消えるストーリーズや短尺動画であるリールは、日常のちょっとした風景や診療の裏側を気軽に発信できるツールです。患者との心理的な距離を縮め、「このクリニック、なんだか楽しそう」「気軽に相談できそう」といった印象を与えるのに効果的です。
診療に関係する内容に限らず、季節の行事やスタッフの誕生日、地域イベントの様子などを取り入れることで、医療機関の“人間味”が伝わります。これはとくに、患者が安心して足を運べるかどうかを判断する大きな要素になります。
検索・保存機能が患者の情報収集を支援
Instagramの「ハッシュタグ検索」や「保存機能」は、患者がクリニックを比較・検討する際に非常に役立ちます。「#〇〇市皮膚科」「#〇〇駅前クリニック」などの地域名や診療科目のハッシュタグを活用すれば、来院エリアに絞って見込み患者に情報を届けることが可能です。
一度投稿を見た患者が、気になった情報を“保存”しておくことで、後日の予約や再検討にもつながりやすくなります。つまり、Instagramは「診療内容を見せる場所」だけでなく、「来院行動を後押しする情報設計」の場としても機能するのです。
3.クリニックでのInstagram活用アイデア10選
Instagramを使ったクリニックの情報発信には多様な切り口があります。以下に、信頼構築と集患に効果的な投稿アイデアを10個ご紹介します。
1. 院内紹介・清潔感の発信
内装、待合室、診察室などを明るく撮影し、清潔で落ち着いた空間であることを視覚的にアピールしましょう。
2. スタッフ紹介・チームの雰囲気可視化
医師やスタッフのプロフィールを紹介することで、患者にとっての“顔が見える医療”になります。
3. 診療内容や検査設備の紹介
たとえば「血液検査の流れ」「予防接種の準備」など、患者の不安を減らす目的で手順を視覚化します。
4. 季節性のある健康情報発信
花粉症、熱中症、インフルエンザなど、時期に応じた健康情報を発信することで「役に立つ情報源」として認識されます。
5. 患者さん向けQ&A投稿
「よくある質問」を画像付きで解説することで、初診のハードルを下げることができます。
6. 予約空き状況・診療時間の案内
急な休診や変更なども画像でわかりやすく案内でき、電話問い合わせの軽減にもつながります。
7. 地域イベントへの参加報告
地域の催し物や学校行事への協力などを投稿することで、地域密着の医療機関であることをアピールできます。
8. お知らせ(臨時休診、インフル予防接種など)
フォロワーへの重要な連絡手段としてもInstagramは有効です。
9. キャンペーン告知(自費診療・自由診療)
自由診療の割引や美容メニューの体験キャンペーンなども、適法な範囲で投稿可能です。
10. スタッフの日常・誕生日・感謝投稿
院内の和やかな雰囲気を伝えることで、患者との心理的距離を縮めることができます。
これらの投稿を組み合わせ、週に2~3回程度の定期発信を行うことで、Instagramアカウントの鮮度と親近感を保ちつつ、信頼と認知を同時に育てることが可能になります。
4.フォロワーを増やすための実践テクニック
投稿頻度と時間帯の最適化
Instagramでフォロワーを着実に増やしていくには、コンスタントな投稿頻度が重要です。目安としては、週に2~3回以上の更新を心がけましょう。必ず毎日投稿する必要はありませんが、アカウントが「稼働している」ことを見せることで、信頼性や継続性が伝わります。
投稿時間帯にも工夫が必要です。患者層によって異なりますが、朝8〜9時・昼12時〜13時・夜20〜22時はInstagramの閲覧が活発になる時間帯とされています。フォロワーの反応がよかった時間帯を分析しながら、継続的な運用改善を行いましょう。
ハッシュタグ戦略と地域名の活用
Instagramの検索導線において最も強力なのが「ハッシュタグ」です。たとえば「#皮膚科」「#健康診断」「#インフルエンザ予防接種」などの医療系タグに加え、「#〇〇市クリニック」「#〇〇駅前病院」などの地域名を組み合わせることで、地元の患者にリーチしやすくなります。
投稿ごとに10〜20個程度のハッシュタグを設定することが推奨されており、人気タグとオリジナルタグ(例:#〇〇クリニックの日常)をミックスすることで、認知度と独自性の両方を確保できます。
フォロワーとの交流(コメント返信・ストーリースタンプ)
フォロワーとの“距離”を縮める上で効果的なのが、双方向のコミュニケーションです。コメントへの丁寧な返信や、ストーリー機能の「質問スタンプ」「アンケート」などを活用することで、フォロワーが「自分の声が届いている」と実感でき、アカウントへの好感度が高まります。
特に医療機関では「質問しやすい雰囲気」が信頼を左右するため、SNS上での丁寧な対応がリアルな来院につながるケースも多く見られます。
5.医療広告ガイドラインとInstagram運用の注意点
投稿内容と表現ルール(NGワード・ビフォーアフター)
Instagramは自由な表現が可能なSNSですが、医療機関が運用する場合は「医療広告ガイドライン」に従う必要があります。とくに注意したいのが、「ビフォーアフター写真」「治療効果の断定表現」「口コミの掲載」「比較優良表示」などは禁止事項に該当する可能性があります。
「必ず治る」「最先端の治療」「〇〇で地域No.1」などの表現もガイドライン違反になる恐れがあり、アカウント凍結や指導対象になるケースもあるため、事前に確認した上で投稿内容を精査しましょう。
症例紹介・体験談投稿に関する留意点
症例紹介や患者の声を紹介したい場合も、必ず本人の同意を得ることが前提です。また、投稿にあたっては個人が特定されないような配慮が必要です。顔写真の掲載や治療経過の公開などは極力控え、あくまで「一般的な事例」として客観的に説明する内容に留めることが安全です。
リポスト・コメント欄の管理体制の整備
患者が投稿したInstagramの内容をリポスト(再投稿)する場合も、必ず本人の許可を得てから実施する必要があります。無断転載や不適切な引用は、法的・倫理的トラブルの原因になります。また、コメント欄に第三者から医療相談やクレームが寄せられることもあります。これらに対しては、個別対応に誘導する文言(例:「詳しい内容はクリニックまでお問い合わせください」)を用い、SNS上での詳細な対応は避けるのが原則です。
Instagramは医療機関の信頼性を高める手段であると同時に、誤った運用によっては信頼を損なうリスクもあるため、投稿前のチェック体制とスタッフへの教育が不可欠です。
6.成功事例に学ぶInstagram運用の効果
【美容皮膚科】来院動機の7割がInstagram経由に
都内の美容皮膚科では、Instagramを積極的に運用し、院内の様子や施術の流れ、スタッフの紹介などを投稿。来院時のアンケートによると、新規患者の約70%が「Instagramを見て来院した」と回答。投稿の内容を分析すると、特に人気だったのは「スタッフの紹介」「施術を受ける前の準備内容」「院内の安心感を伝えるリール動画」でした。
【小児科】地域コミュニティとのつながりが強化
地方の小児科クリニックでは、Instagramを通じて地域の保育園や学校行事に関する投稿を継続したところ、地域住民との接点が広がり、患者からの紹介が急増。ストーリーズで「今日の空き状況」を案内したり、「先生の子育てコラム」などの親近感ある投稿が共感を呼び、フォロワー数も半年で2倍に増加しました。
【耳鼻科】リール投稿による認知拡大と予約率向上
地方都市の耳鼻科では、症状のセルフチェック法や来院前の注意事項を短尺動画(リール)で発信したところ、再生数が1万回を超える投稿も多数発生。結果として「Instagramで見てきた」という患者が増え、Web予約数が前年比1.5倍に。専門性と親しみやすさを両立したコンテンツが高く評価されました。
これらの事例に共通して言えるのは、「Instagramは単なる広報手段ではなく、信頼と行動を促す導線」になっているという点です。
7.Instagramと他SNSとの使い分け
LINE・X・Facebookと連携した集患設計
Instagram単体での運用に加え、他のSNSとの連携を図ることで、より強力な集患・信頼構築のネットワークを築くことができます。たとえば、LINEでは予約リマインドや個別連絡、X(旧Twitter)では緊急の診療情報や臨時休診のお知らせ、Facebookでは地域コミュニティとの関係強化など、それぞれに異なる役割があります。
Instagramで興味を持ったユーザーがLINEから予約し、診療後に再度Instagramをフォローする、といった“クロスチャネル”での患者接点を設計することで、リピーターや紹介につながる導線が自然に生まれます。
Instagramは「魅せる」、LINEは「つなぐ」役割
Instagramはあくまで「魅せる」ことに特化したSNSであり、視覚的なブランディングやイメージ戦略に優れています。一方で、LINEは「つなぐ」役割を担うSNSです。予約、リマインド、再来院の案内など実務的な連絡を担い、継続的な関係性を構築します。
この2つのSNSを戦略的に使い分けることで、新規集患から定着までを一貫して支援する仕組みが構築でき、医療機関としての信頼性をさらに高めることができます。
8.SNS運用を支援する外部パートナーの活用法
SNSを自院で全て運用するのは理想ですが、リソースや専門知識が不足している場合、外部パートナーの支援を活用することで質の高い運用が実現可能です。
たとえば、投稿素材の撮影・編集・文案作成を代行する「SNS運用代行業者」や、月1回の運用レビューと改善提案を行う「SNSコンサルタント」などがあります。また、医療広告ガイドラインに詳しい専門家と連携することで、リスクを避けながら効果的な投稿が可能になります。
9.まとめ Instagramで信頼と集患を両立させるSNS戦略
Instagramは単なるSNSではなく、クリニックの顔であり、信頼と共感を生む「ビジュアルコミュニケーションの場」です。視覚的な安心感を与える投稿、継続的な情報発信、患者との双方向の交流を通じて、確かな信頼を積み重ねていくことができます。
加えて、医療広告ガイドラインへの配慮や、他SNSとの役割分担、運用体制の整備など、多角的な視点で戦略を組み立てることで、Instagramは強力な集患チャネルとなります。
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