
美容クリニックのSNS運用、ビフォーアフター写真はOK?
1.はじめに 美容クリニックとSNSの関係性
美容クリニックの集患やブランド形成において、SNSの活用はもはや必須の時代です。Instagram、TikTok、X(旧Twitter)などのSNSは、ターゲット層である20〜40代の女性ユーザーが日常的に利用しており、検索エンジンよりもSNSで情報を探す“SNSネイティブ”な患者層が増えています。
中でも「ビフォーアフター写真」や「症例紹介」は、美容医療に対する不安や疑問を解消し、来院への背中を押す重要なコンテンツとなっています。しかし、その一方で医療広告ガイドラインに違反するリスクもあるため、正しい運用が求められます。
本記事では、集患につながるSNS運用の戦略、ビフォーアフター写真の活用可否、法的リスク、求人への応用など、最新の活用術を解説します。
2.美容クリニックにおけるSNS活用の重要性
SNSは信頼と共感を生む“第二の診察室”
美容クリニックにとってSNSは、ただの情報発信ツールではなく、“患者との接点”であり“信頼を構築する場”でもあります。特に美容医療は、一般的な医療に比べて自由診療の割合が高く、価格や施術内容もクリニックごとに異なります。そのため、患者側も「どんな医師か」「症例数は多いか」「施術は丁寧か」といった情報をSNSから積極的に収集しています。
Instagramでは症例写真や美容豆知識、TikTokでは医師が解説する短尺動画、Xでは最新のお知らせや考え方の発信など、媒体ごとの特徴を活かすことで、多角的にブランド力を高めることができます。
SNSが集患・求人・信頼構築を兼ねる時代へ
SNS運用の成果は単なる「いいね数」や「フォロワー数」では測れません。実際には以下のような波及効果が見込めます。
- 患者がSNSを見て安心し、初診予約につながる
- SNSを見て来院した患者が、スタッフ対応の丁寧さを投稿→口コミ拡散
- SNSで院内の雰囲気が伝わり、求人応募につながる
つまり、SNSは“集患・ブランディング・採用”を同時に実現する強力な武器なのです。
3.ビフォーアフター写真の活用はOK?法的ガイドラインを徹底解説
医療広告ガイドライン上の「ビフォーアフター」表現の注意点
美容医療を含む医療機関の広告には、「医療広告ガイドライン」(厚生労働省)が適用されます。この中で特に注意が必要なのが、施術前後の比較写真、いわゆる“ビフォーアフター”の掲載です。
基本的に、ビフォーアフター写真は「体験談等として第三者が自発的に投稿した場合」は認められますが、クリニック側が広告として発信する場合は、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 特定の治療であることが明示されている
- 個人の感想であることが明記されている
- 効果には個人差がある旨が記載されている
- 比較写真が加工等されていない
- 撮影日・治療時期などが記されている
このような情報を添えていないビフォーアフター写真の掲載は、“虚偽・誇大広告”として指導・処分の対象になる可能性があります。
SNSでの発信も「広告」と見なされるリスク
SNSは「広告ではない」と考えている医療機関もありますが、厚労省の見解では、以下の条件を満たすとSNS上の投稿も“広告”とみなされます。
- 医療機関の管理下である
- 不特定多数に向けて情報発信している
- 患者の受診等を誘引する意図がある
つまり、クリニックの公式アカウントでビフォーアフターを投稿する場合、多くが広告と見なされ、ガイドラインの対象となるのです。
違反リスクを避ける3つの対策
- 投稿前に弁護士や医療法務に精通した専門家のチェックを受ける
- 文言に「個人の感想」「効果には個人差」などの注意書きを明記する
- ビフォーアフターではなく“経過写真”として、定点撮影をするなど演出を避ける
このように、SNSでの症例写真活用には高度なリテラシーとガイドライン理解が不可欠です。
4.SNS媒体ごとの特徴と戦略的な使い分け
Instagram|ビジュアル重視の情報発信に最適
Instagramは、美容クリニックのSNS運用で最も活用されているプラットフォームです。写真やリール動画を通じて、院内の雰囲気、症例、スタッフ紹介、美容知識などを発信するのに適しており、ユーザーの7割以上が女性という特性も、クリニックとの相性が抜群です。
【活用戦略】
- 高画質な症例写真(ガイドライン準拠)
- 「Q&A」「1分解説」などのリール活用
- ハッシュタグ(例:#美容皮膚科 #しみ治療)による露出増加
- ハイライトで施術メニューや予約方法を固定表示
TikTok|認知度拡大と若年層アプローチに有効
TikTokは10〜30代の若年層を中心に人気があり、エンタメ性とテンポの良い動画が好まれます。美容施術の過程や、医師・スタッフの人柄が垣間見えるコンテンツが反響を呼びやすく、初診につながるケースも増えています。
【活用戦略】
- 施術風景(BGM付きのダイジェスト形式)
- 「やってはいけないスキンケア5選」などの注意喚起型動画
- コメントへの丁寧な返信で親近感アップ
- 「医師の日常」などのオフショットでブランディング
X(旧Twitter)|リアルタイム性と思想発信の場
Xは、フォロワーとの距離が近く、コメントやリポストなどの双方向性が高い媒体です。リアルタイムでの混雑状況の告知や、医師の考え方・美容トレンドに対するコメントなど、知識や思想の発信に向いています。
【活用戦略】
- キャンセル枠や当日空き情報の発信
- スタッフ・医師のおすすめ商品紹介
- 業界トピックへの見解コメント
- フォロワーとの質疑応答
5.SNS活用が求人・採用力を高める理由
SNSが「働きたい職場」を演出するブランディングツールに
美容クリニックでは、看護師・受付・カウンセラーなどの採用競争が年々激化しています。そこでSNSを使って“働きやすさ”や“雰囲気の良さ”を発信することで、求職者に対して強い印象を残すことが可能です。
実際に、以下のような投稿が応募動機につながったケースがあります。
- スタッフの誕生日を祝う様子
- 勉強会や技術研修の風景
- 1日の業務スケジュール紹介
- 制服やメイクの自由度についての発信
「ここで働きたい」「雰囲気が自分に合っていそう」と思ってもらえれば、求人広告よりも強力な採用導線となります。
採用ページ×SNS連動でエントリー率UP
自社サイトの採用ページとSNSをリンクさせることで、信頼感とエンゲージメントが向上します。たとえば、Instagramのプロフィールリンクから採用情報に飛ばす、ストーリーズで求人を告知するなど、ダイレクトな導線設計が有効です。
また、求人媒体では伝えきれない「日常の表情」をSNSで見せることで、離職率の低下にもつながる傾向があります。
6.投稿運用ルールの作成と運用体制の整備
ガイドライン順守とブランド統一を両立させる
美容クリニックがSNSを活用する上で、医療広告ガイドラインや院内のルールを明文化した「運用ガイドライン」が不可欠です。特に以下の点はルール化が必要です。
- ビフォーアフターの投稿基準
- 投稿前の院内チェックフロー
- 回答できるコメント内容と禁止事項
- トーン&マナー(絵文字や言葉遣いなど)
ブランドの一貫性を保ちつつ、リスクを最小限に抑える体制が求められます。
SNS担当者の役割と業務分担
担当者が複数名いる場合、投稿作成、承認、返信、分析など役割分担を明確にすることが重要です。特に医師の監修が必要な投稿や、患者対応を含むコメント管理には、現場との密な連携が欠かせません。
SNS運用の外注を検討する際も、「戦略策定」「投稿作成」「投稿代行」「レポート分析」のどこまでを外部に任せ、どこを内製化するかを明確にしておくと効率的です。
7.SNS運用におけるトラブルとその回避策
患者とのトラブル例と未然防止のポイント
SNS上では患者とのトラブルが発生することもあります。たとえば以下のようなケースが報告されています。
- DMでの医療相談に応じてしまい、診療行為と誤解される
- 患者と思われる人物がネガティブなコメントを投稿し炎上
- 症例写真に患者の同意が取れていなかった
これらを防ぐためには、以下のような対策が有効です。
- DMでは診療に関する質問には一切応じず、必ず「クリニックへご相談ください」と案内
- コメント欄は原則公開とし、誹謗中傷には冷静に対応(削除のルールを定める)
- 症例写真には必ず書面での使用同意を取得し、匿名性を担保
SNSは“拡散力”がある反面、“炎上リスク”もはらんでいるため、慎重な対応が求められます。
ガイドライン違反による行政指導・アカウント凍結のリスク
前述のように、ガイドラインに違反した投稿を行うと、保健所や都道府県から指導を受けるケースがあります。加えて、InstagramやTikTokなどのプラットフォーム側からアカウント凍結・シャドウバンを受ける可能性も。
具体的には以下のような投稿がリスクとなります。
- 「必ず効果が出る」といった誇大表現
- 手術後の血や腫れが強調される過激な画像
- 他院との比較や競合の批判
「バズを狙うあまり過激になりすぎる」「症例を強調しすぎる」といった投稿は、長期的に見るとクリニックブランドの信頼を損なうことにもつながります。
8.SNS活用に強いパートナーとともに成果を出す
内製だけで限界?プロの支援で“戦略化”を図る
SNS運用は一見手軽に見えますが、継続的に投稿を作成し、ガイドラインを守りながら、反応を分析して改善していくには専門的な知識と時間が必要です。院内スタッフの片手間では限界が来るケースも多く、プロの支援を活用して「SNS戦略を仕組み化」する動きが増えています。
以下のような業務を一括で委託できると、院内の負担が軽減され、より本業に専念できます。
- 投稿スケジュール設計とカレンダー管理
- 医療法務に配慮した投稿作成とデザイン
- 数値分析と改善提案
- 炎上リスク対応マニュアルの整備
9.美容クリニックのSNS運用 成功事例・失敗事例
成功事例①|症例投稿で月間30件の新患獲得
都内A美容クリニックでは、Instagramを中心に毎日1投稿、週1リールを運用。医師が症例写真とともに、施術内容や患者の悩みに寄り添う解説を続けたところ、信頼感の醸成につながり、月間平均30件の新規予約がInstagram経由で入るようになりました。特に「〇〇治療の経過レポート」形式が反響を集めました。
成功事例②|TikTok動画で求人応募数が3倍に
関西のBクリニックでは、スタッフの日常風景や仕事の様子をショート動画で発信。求人媒体では見えづらい「働く人のリアル」が伝わり、「雰囲気がよさそう」「一緒に働きたい」と応募数が3倍に増加。定着率も向上しました。
失敗事例①|過激な施術動画で炎上・投稿削除
地方のCクリニックは、注入系施術中の映像を過激な演出で投稿し、視聴者から「不快」と批判が殺到。コメント欄が炎上し、アカウント停止寸前まで追い込まれました。演出が“過ぎる”と信頼感を失う典型的な事例です。
失敗事例②|無許可のビフォーアフター掲載で患者からクレーム
Dクリニックでは、スタッフの判断で症例写真をSNSに投稿してしまい、患者本人からのクレームが発生。事前同意書が未取得であったため、謝罪とともに投稿を削除。以後、院内での運用ガイドラインが整備されるきっかけになりました。
10.まとめ|SNSは美容クリニックの“信頼装置”になる
SNSは美容クリニックにとって、患者との信頼関係を構築し、集患・求人の質を高めるための不可欠なツールです。特にビジュアル訴求が強い美容医療分野では、写真や動画のインパクトは大きく、正しく活用することで来院動機の形成につながります。
一方で、医療広告ガイドラインの順守や投稿内容の管理を怠ると、思わぬトラブルや信用低下を招くリスクも。だからこそ、ルールに基づいた安全な運用と、継続可能な体制整備が重要です。
SNSは「映えるだけの場」ではなく、「見られて信頼を得る場」へと進化しています。戦略的に活用すれば、長期的な集患とブランディングの基盤になります。美容クリニックの未来を支えるSNS活用を、今こそ本気で見直してみましょう。
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