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コラム

Column

クリニックの分院展開とは?開設の流れやメリット

1. 分院展開とは何か?

コストと物件を示した図

分院展開とは、既に開業しているクリニックが新たに別の場所に診療所を開設し、複数拠点で医療サービスを提供する経営戦略のことです。

医療法上の位置づけ

個人開業医は原則として1か所しか診療所を設けられませんが、医療法人化すれば複数の診療所(分院)を運営可能です。分院展開を検討する際は、まず法人化を視野に入れる必要があります。

本院と分院の違い

  • 本院:法人の本拠地であり、経営判断・統括を行う拠点
  • 分院:医療サービスを提供する別拠点であり、独自の患者層や診療圏を持つ

分院展開は、単なる拠点追加ではなく「経営戦略の多拠点化」とイメージしておくとよいでしょう。

 

2. 分院展開が注目される理由とメリット

分院展開は、医療機関の成長戦略として注目を集めています。その背景には、医療環境の変化と経営的なメリットの両面があります。

なぜ分院展開が広がっているのか

都市部の競争激化

クリニック数が増加し、患者の選択肢が広がるなか、診療圏を拡大して新規患者を取り込む必要性が高まっています。

地域医療ニーズの多様化

地方では高齢化や交通事情により「通いやすい場所で診療を受けたい」という需要が強まっており、分院は地域密着型医療を実現する手段となります。

経営の安定化とリスク分散

一つの院に依存する経営では、患者数の変動や立地の影響を受けやすいですが、複数拠点を持つことで経営リスクを分散できます。

メリット

診療圏拡大による集患力の強化

新たなエリアの患者を取り込み、法人全体としての売上拡大につながります。

役割分担による医療効率の向上

本院を高度医療に、分院を外来や検診に特化させるなど、診療機能を分けることで患者の利便性が高まります。

スケールメリットの活用

医療機器や消耗品を一括購入することでコストを削減できます。また、統一的な教育研修で医療サービスの質を安定させられます。

このように、分院展開は「環境要因による必要性」と「経営拡大の魅力」の両方を背景に広がっている戦略といえます。

 

3. 分院展開に潜むデメリット・注意点とは?

分院展開は魅力的な戦略ですが、一方でデメリットや注意すべき課題も存在します。十分な準備を行わなければ、経営リスクを拡大させる可能性もあるため注意が必要です。

スタッフマネジメントの複雑化

本院と分院それぞれに医師や看護師、事務スタッフを配置する必要があり、雇用や教育の負担が増加します。特に、分院長のリーダーシップが不足していると、現場の運営が不安定になりかねません。

本院経営への影響

分院に人材や資金を割くことで、本院の経営資源が不足するリスクがあります。本院の収益基盤が安定していない状態で分院を展開すると、両院とも赤字に転落するケースもあるため、タイミングの見極めが重要です。

初期投資と資金回収リスク

分院開設には多額の初期投資が必要です。賃料や医療機器、人件費などが新たに発生し、患者数が安定するまでの間は赤字が続くこともあります。資金回収の見通しを十分に立てずに進めると、法人全体の資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

 

4. 分院展開を成功させるための実務手順と組織体制づくり

チェックリストの写真

分院開設は「戦略的判断」だけでなく、自治体や国への申請・届出といった実務作業を正確にこなすことが欠かせません。ここでは、分院を検討しているドクターが実際に踏むべき手順を整理します。

ステップ1:事前調査と計画立案

最初に行うべきは、立地の診療圏調査収支シミュレーションです。人口動態、競合クリニックの診療科目、交通アクセスを分析し、潜在患者数を見積もります。その上で、想定患者数に基づいた収支予測を作成し、半年から1年程度の赤字期間をカバーできる資金計画を立てることが大切です。本院と分院の役割分担(例:本院=専門外来、分院=一般診療)を明確にしておくと、経営上の全体最適化につながります。

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ステップ2:法人化と、各所への事前相談

分院設置は個人開業ではできず、医療法人のみが可能です。法人化していない場合は、まず法人設立を行います。既存法人の場合は「定款変更」により分院を追加します。これらはいずれも都道府県知事の認可が必要です。計画段階から保健所や都道府県に事前相談を行い、必要な書類や建物要件を確認しておくとスムーズです。

ステップ3:人材確保・組織設計

分院長の選定は最重要事項です。可能であれば本院で理念や診療方針を共有した医師を登用するのが理想です。スタッフの採用については、本院と同じ基準で教育を受けられる仕組みを整え、法人全体で統一した接遇・医療水準を維持することが必要です。

ステップ4:行政手続き

分院を新たに開設する際には、以下の手続きを行う必要があります。

  1. 診療所開設届(保健所宛):建物図面、勤務医師・看護師名簿などを添付
  2. 医療法人定款変更届・登記(都道府県知事宛)
  3. 保険医療機関指定申請(厚生局宛):保険診療を行うために必須
  4. 生活保護法指定医療機関申請(市町村宛) ※必要に応じて
  5. 消防署・建築確認、労務関連届(労基署・年金事務所宛)

これらは審査・確認に時間を要するため、余裕を持って準備することが重要です。

ステップ5:立ち上げと運営体制

開院準備段階では、本院からオープニングチームを派遣し、受付や会計業務をサポートするのが効果的です。また、法人全体で共通の業務マニュアルを作成し、どの院でも同じ品質の医療サービスを提供できる体制を整えます。

開院後は定期的に法人全体会議を実施し、患者数・待ち時間・稼働率といったKPIをモニタリングします。さらに、看護師や事務スタッフの分院間ローテーションを行い、属人化を防ぎつつ、一体感を醸成することが成功のポイントです。

 

5. 分院開業に必要な資金と調達手段

分院展開には多額の資金が必要になります。適切な資金計画を立て、リスクを抑えながら調達することが成功の鍵です。

必要な費用の項目

分院開設に伴う主な費用は以下の通りです。

  • 物件取得費・賃料:立地条件によっては大きな負担に
  • 医療機器・内装工事費:診療科目に応じて高額になりやすい
  • 人件費:開院直後からスタッフ給与が発生
  • 広告宣伝費:新規患者を獲得するための必須コスト

融資や補助金の活用

分院展開では、自己資金だけでまかなうことは難しいため、金融機関からの融資を活用するのが一般的です。さらに、地域によっては中小企業向けや医療機関向けの補助金・助成金が利用できる場合もあります。制度を把握しておくことで、資金負担を軽減できます。

資金計画の立て方

資金計画を立てる際には、初期投資だけでなく開業後半年~1年分の運転資金を含めることが重要です。患者数が軌道に乗るまでの間、赤字を支える余力を持つことで経営破綻のリスクを避けられます。

 

6. 分院展開におけるタイミングと、人材採用のコツ

分院展開はタイミングを誤ると、経営基盤を揺るがすリスクがあります。適切な時期を見極め、人材確保を計画的に行うことが成功の条件です。

分院展開に適したタイミング

分院展開は、本院の経営が安定している時期に行うのが理想です。本院の収益が十分にあり、スタッフが定着している段階であれば、経営資源を分院に割いても影響を最小限に抑えられます。逆に、経営が不安定な状態で分院を開設すると、法人全体の経営が危うくなる可能性があります。

分院長の採用と育成

分院展開の成否を左右するのは「分院長の人選」といっても過言ではありません。分院長には診療スキルだけでなく、マネジメント力やリーダーシップが求められます。人材紹介会社を利用する方法もありますが、可能であれば本院で育成した医師を登用することで、理念共有や運営の安定につながります。

事務スタッフ採用の工夫

分院は患者対応や経理・労務などの事務作業も新たに発生します。経験豊富な事務スタッフを採用することで、本院と分院間の事務処理をスムーズに連携させられます。また、最近では医療事務システムやクラウド管理を導入し、人的負担を減らすクリニックも増えています。

 

7. 分院展開後の経営安定化に向けた取り組み

分院を開設して終わりではなく、むしろそこからが本当のスタートです。分院を持つことで法人経営は複雑化するため、開院後は「いかに早く安定軌道に乗せるか」が重要なテーマになります。

経営数値のモニタリングと改善

分院の経営状況は本院と分院を分けて集計し、患者数・再診率・予約キャンセル率・平均診療単価などの指標を定点観測することが必要です。これにより、採算性が低い要因を早期に把握し、広告強化や診療体制の改善といった対策を打つことが可能になります。

本院と分院のブランド統一

複数の拠点を展開する際に最も注意すべきは「患者から見た一貫性」です。本院と分院で診療スタイルや接遇レベルが大きく異なると、法人全体の信頼を損なうリスクがあります。診療内容、広報デザイン、Webサイトなどを統一し、どの院に通っても同じ水準の医療を受けられるという安心感を提供することが大切です。

地域連携と紹介患者の獲得

分院は単独で経営するのではなく、地域医療のネットワークの中で存在感を高めていく必要があります。地元の医師会や周辺の中核病院と連携し、紹介患者を確保することで診療数を安定させることができます。特に専門性の高い分野を持つ分院の場合、地域医療連携室や開業医との関係構築が安定経営のカギとなります。

人材定着の工夫

分院スタッフの定着率を高めるためには、キャリアパスを明確に示すことが欠かせません。本院との人事交流や昇進の機会を設けることで「分院勤務がキャリアの停滞ではなく成長の一歩」であることを示すことができます。

このような継続的な取り組みを通じて、分院を「負担」ではなく「成長の原動力」に変えていくことが可能になります。

 

8. 専門家のサポートにより、分院展開成功へ

コンサルタントと医師の握手

クリニックの分院展開は、診療圏の拡大、経営の安定化、地域医療への貢献など多くのメリットを持つ一方で、資金や人材、行政手続きといった課題も伴います。

成功の鍵となるのは以下の4点です。

  • 本院の経営基盤の安定:収益と人員体制が確立してから取り組む
  • 診療圏調査と資金計画の徹底:半年〜1年の赤字にも耐えられる余力を確保
  • 行政手続きへの対応:法人化・保健所届出・厚生局指定申請を正確に実施
  • 人材戦略と組織運営:分院長の育成、スタッフ教育、法人全体での理念共有

これらを意識して進めれば、分院展開はクリニック経営をさらに強固にし、地域に根ざした医療提供を可能にします。

分院展開を検討しているドクターは、メディシーにご相談ください。専門家が伴走することで、リスクを最小限に抑えながら分院展開を実現できます。

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