医療モールでクリニック開業は成功する?地域に根差した医療
1.医療モールとは?地域医療における役割
医療モールの主な形態
医療モールとは、複数の診療科を持つクリニックや薬局が同じ建物や敷地内に集まって開業する形態を指します。一般的には「医療ビル型」「商業施設併設型」「医療ビレッジ型」などに分類され、立地や規模によって特徴が異なります。たとえば、商業施設と併設された医療モールは買い物や食事のついでに通院できる利便性があり、生活導線に組み込まれやすい点が特徴です。また、医療ビル型は駅前や主要道路沿いに立地するケースが多く、通勤・通学の動線に適しているため、幅広い世代の患者を集めやすい傾向があります。
地域医療における役割
地域社会において、医療モールは“医療のランドマーク”として機能することも少なくありません。小児科、内科、耳鼻科などが同居することで、患者は複数の診療科をスムーズに受診でき、安心して継続的に通院することが可能です。高齢化が進む地域では、かかりつけ医的な役割を果たすクリニックと連携し、地域包括ケアシステムの一端を担うことも期待されています。さらに、調剤薬局が同じ施設内にあるケースが多く、処方箋の受け取りもスムーズで患者満足度の向上につながります。
このように、医療モールは単なる集合施設ではなく、地域医療を支える重要な拠点としての役割を果たしているのです。
2.なぜ「医療モール開業」は魅力的なのか?
医療モールでの開業が注目される理由は、大きく3つのメリットに整理できます。
高い集患力と認知獲得のしやすさ
まず1つ目は「高い集患力」です。駅前や幹線道路沿いに立地するケースが多いため、アクセス性が高く、近隣住民や通勤者に広く認知されやすいのが特徴です。さらに商業施設と併設されている場合、買い物や外食といった生活動線の中で自然と利用してもらえるため、新規患者の獲得につながりやすくなります。
初期投資の軽減
2つ目は「初期投資の軽減」です。単独でクリニックを建てる場合、建物の設計・建築、駐車場の整備など大きなコストがかかりますが、医療モールでは共用部分を分担するためコストを抑えやすい特徴があります。待合スペースやトイレ、駐車場などを共用できれば、開業に必要な自己資金や融資額を軽減できます。エレベーターなどのバリアフリー対応もされているケースが多く、設備投資をおさえられる傾向にあります。
医療機関同士の連携による診療品質向上
3つ目は「医療機関同士の連携による診療品質向上」です。たとえば、内科で検査を受けた患者が同じモール内の眼科や耳鼻科にスムーズに紹介されるなど、患者にとって効率的で安心できる診療体制が整いやすくなります。結果として、地域全体の医療提供体制が強化され、医療モールが地域医療の拠点として機能するのです。
3.医療モール開業の注意点・デメリット
メリットの多い医療モールですが、注意すべき点やデメリットも存在します。
診療科競合によるリスク
まず、もっとも大きなリスクは「診療科の競合」です。基本的にはモール内で競合が起きないような配慮がされるはずですが、循環器内科・消化器内科など、専門性がそれぞれにある場合は両科目ともに入る可能性があります。診療内容によっては重なる部分が発生し、患者の取り合いになってしまう可能性もなくはありません。
大切なのは、開業前に必ず診療圏調査を依頼し、競合状況を見極めることです。
自由度の制限とモール全体の影響
次に「自由度の制限」です。内装や外観、看板の設置などについてはモールの規約や運営会社の方針に従う必要があり、単独開業と比べると制約が多くなります。また、モール全体の評判や運営方針に影響を受けやすく、自院だけが独立して意思決定できない点もデメリットです。
他テナントとの関係性
さらに「他テナントとの関係性」にも注意が必要です。モール全体での清掃体制や駐車場の使い方など、共有部分のルールを守ることが求められます。もし他の医療機関や運営側との連携がうまくいかない場合、患者からの信頼を損なう可能性があります。
4.医療モール開業を「成功」に導くためのポイント
地域診療圏と患者ニーズの分析
医療モール開業の際には、「モール全体での診療科バランス」を踏まえた診療圏分析が不可欠です。戸建てクリニックの開業であれば、診療科目に基づいて地域ニーズを確認し、需要のあるエリアを選定すればよいですが、医療モールの場合はさらに“モール内の診療科構成とのバランス”を考慮する必要があります。
一つの例として、「内科+小児科+耳鼻科+薬局」といった組み合わせが一か所の医療モールに揃うと、地域住民にワンストップ医療を提供できます。単独の需要だけでなく「他科との連携で相乗効果が見込めるか」という視点も重要になります。例えば、内科で慢性疾患の患者を診て、必要に応じてモール内の眼科や整形外科へ紹介できる体制は、医療モールならではの強みです。
さらに、モールが駅前型なのか、商業施設併設型なのかによっても集患構造は変わります。駅前型であれば通勤・通学層の利用を想定し、商業施設併設型であれば子育て世帯や買い物客をターゲットとするなど、立地の特性とモール利用者層を意識した診療圏分析が成功のカギとなります。
モール全体でのイベント参加と地域ブランディング
医療モール開業ならではの強みの一つが「モール全体でのイベント企画」です。例えば健康フェアや生活習慣病予防の啓発セミナーを共同で開催すれば、地域住民にとって「ここに行けば健康に関する相談がすべて完結する」という安心感を与えられます。このような活動をウェブサイト・SNSなどで発信することで、集患効果を高めるでしょう。また、地域社会に根ざした信頼を得るための大きな武器になります。
自院が積極的に参加・協力することで、モール全体のブランド価値向上と同時に、自院への信頼感醸成につながるのです。
共用部分の費用分担と運営ルールの把握
一方で、医療モール特有の課題として「共用部分の維持費」などの費用負担の可能性も視野にいれましょう。戸建てクリニックでの開業にはないコストであり、長期的な経営計画に影響が出てくる可能性があります。契約前に共用費の分担割合や広告方針、清掃・駐車場利用などの運営ルールを明確に確認することが重要です。場合によっては交渉の余地があるため、入居前から条件を精査しておくことが成功のカギとなります。
コンサルタントや設計パートナーとの連携
医療モール開業は単独で進めるには課題が多いため、専門的な知見を持つパートナーの存在が成功の支えになります。特に医療機関の開業支援に特化したコンサルタントや、医療施設の設計経験が豊富な建築士などとの協力は不可欠です。内装のレイアウトや動線設計、患者の導線を考慮した設備配置は、診療効率や患者満足度に直結するため、専門家の助言を受けながら整備していくことが望ましいでしょう。
5. まとめ
医療モールは複数の診療科が集まることで、患者が一度の来院で必要な診療を受けやすい環境を提供できます。たとえば、内科で検査を受けた後に同じモール内の耳鼻科や眼科を紹介されるなど、シームレスな医療体制を構築できる点は、戸建てクリニックの開業では得がたいメリットです。
また、高齢化が進む日本社会において、医療モールは地域包括ケアの拠点となる可能性を秘めています。地域住民にとって「ここに行けば安心できる」という場所となることは、医療機関単体を超えた社会的な役割を果たすことにつながります。医療モールは単なる集合施設ではなく、地域全体の健康を支えるプラットフォームとして期待されているのです。
メディシーによる医療モール開業支援
診療圏調査と物件選定のサポート
医療モール開業の成功には、適切な立地選びと診療圏調査が欠かせません。人口動態や競合状況をふまえた診療圏調査を行い、医師の希望や診療方針に合致した提案を行っています。
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物件契約や内装工事、資金調達の相談など、開業に必要なプロセスをトータルでサポート。特に医療モールにおける共用スペースのルールや費用分担といった注意点についても、経験に基づいたアドバイスを提供しています。
医療モール開業に興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。