クリニックと薬局の関係性|同一建物や敷地内薬局
1.クリニックと薬局の基本的な関係性「医薬分業」
クリニック(医療機関)と薬局は、患者に医療を提供する上で不可欠な両輪といえます。ただし、両者は機能的にも法的にも独立した存在であることが求められています。クリニックは診察・診断・処方箋の発行を担い、薬局は処方箋に基づく調剤や服薬指導を通じて、医薬品の適正使用を確保します。この分業構造は「医薬分業」と呼ばれ、日本の医療提供体制において基本原則となっています。
また、クリニックと薬局の独立性の担保は一貫して重要視されています。特に問題視されるのは、医療機関と薬局が過度に一体化してしまい、患者の薬局選択の自由が損なわれるケースです。そのため、同じ建物や敷地内に立地する場合でも、形式的・実質的な独立性をどのように維持するかが問われています。
この関係性を理解することは、開業を検討する医師や薬局経営者にとって不可欠であり、また地域における「かかりつけ機能」を果たすための出発点にもなります。
2.厚生労働省の最新規制とガイドライン
かつては、公道を介することやフェンスを設置することで、医療機関と薬局を隔てる必要がありました。ですが、改定後の平成28年(2016年)10月1日より規制が緩和され、条件はあるものの同一敷地内にある形態も認められるようになりました。

出典:厚生労働省「病院の敷地内に所在する薬局に関する調査について(令和6年12月16日)」
改定後のポイントは、下記です。
専用通路で直結する薬局は不可
患者がクリニックを通過しないと薬局に行けない構造は認められない。
外部から直接アクセス可能であること
薬局には、一般道路から誰でも利用できる出入口が必要。
経営の独立性
医療機関と薬局が同一資本・同一経営で運営されていないかが審査される。
これらの規制は「形式的な独立性」だけでなく、「実質的な独立性」を確保することを目的としています。つまり、建物の構造だけでなく、経営の観点での独立性、さらに患者が自由に薬局を選べる状況が担保されているかどうかが重視されるのです。
3.実際のデータから見る「敷地内薬局」の現状
ここでは、厚生労働省の「病院の敷地内に所在する薬局に関する調査」に基づいて、敷地内薬局の現状を解説していきます。
病院・診療所の敷地内薬局数

出典:厚生労働省ホームページ 「病院の敷地内に所在する薬局に関する調査について」
2020年4月時点で、病院・診療所の敷地内薬局は167薬局(上記表の、123+44薬局)でした。ですが、1年後の2021年4月では351薬局(上記表の、196+155薬局)まで増加しております。
敷地内薬局の体制・高度な薬学管理機能

出典:厚生労働省ホームページ(病院の敷地内に所在する薬局に関する調査結果)
敷地内薬局の体制
処方箋応需枚数は、平均2,744枚/月と比較的多い傾向にあります。(薬局平均:1,661枚)
また、1日当たりの平均勤務薬剤師数は5.7人と、こちらも比較的多いです。(薬局平均 :2.7人)
高度な薬学管理機能
敷地内薬局の医薬品備蓄状況は平均1,669品目と、薬局全体の平均と比較して多く、高度な薬学管理機能が備わっている傾向にあります。(薬局平均:1,150品目)
薬局が敷地内にあることで情報交換がしやすくなります。麻薬や抗がん剤、高額医薬品に関しても、クリニックと薬局で連携を取りあうことができるため、薬局はがん治療など行う患者様への服薬フォローもしやすくなる利点があります。
実際に敷地内薬局の中で、高度な薬学管理機能に係る業務について、「がん」「在宅医療」に関する業務に注力しているという回答が多いです。

出典:厚生労働省ホームページ(病院の敷地内に所在する薬局に関する調査結果)
また、病院敷地内薬局の47.7%が特定薬剤管理指導加算2の施設基準の届出を行っております。薬局全体では13.6%ほどなので、全体と比較して多い結果でした。
- 特定薬剤管理指導加算2:がん化学療法を受ける患者に対し、レジメン情報等に基づく服薬指導、医療機関へ必要な情報をフィードバックを実施 *100点(月1回)
4.クリニック側から見たメリットと注意点
クリニックと薬局が同一建物や敷地内に立地することには、患者にとっての利便性向上という明確なメリットがあります。診察後にすぐ薬を受け取れる動線は、高齢者や車いすの方、通院回数の多い患者にとって利便性があり、クリニックの評価にもつながるでしょう。
また、クリニックのスタッフも薬局へ往来しやすく、業務連携がしやすい点がメリットです。
薬局と連携し、抗がん剤治療中の患者様には投薬中のフォローアップを行ってもらえたり、副作用の兆候を含め体調変化を情報提供してもらいやすくなります。
しかし同時に、注意点もあります。同一建物内に薬局がある場合、患者がその薬局を「必ず利用しなければならない」と感じてしまい、薬局選択の自由を阻害する懸念も否めません。
また、建物の物理的な観点だけでなく、経営面で独立性の確保があることが示せるようにしましょう。
5.まとめ 患者本位の関係を築くために
クリニックと薬局は医療提供体制の中で不可欠な関係にあり、その独立性と患者の選択の自由を守るための規制を厚生労働省が設けています。
- 同一建物や敷地内であっても、専用通路の禁止や外部アクセスの確保といったルールがある
- 「敷地内薬局」は増加しているが、制度趣旨に基づき独立性の維持が求められている
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